原発関連資産の減価償却費

 東電社員の人件費を別にすると、一番大きな論点となったのは、原発関連資産の減価償却費である。

 東電によると、原発関連資産の減価償却費は900億円程度とされる。福島第1原発5号機・6号機、福島第2原発については、原価算定期間内の再稼働が予定されていない。それにもかかわらず、減価償却費が電気料金を決定する基礎となる総括原価に含まれていることについては異論も多い。消費者委員会の意見書においても、原価から除く方向で考えるべきではないかと、疑問が投げかけられている。

 この900億円のうち、不稼働の福島第1原発・福島第2原発に対応する部分と2013年4月再稼働予定の柏崎刈羽原発の不稼働期間の減価償却費が、具体的にどれくらいの額になるのか正確なところはわからない。

 かりに半分として450億円である。ある費用を企業部門(自由部門)と家庭部門(規制部門)にどのように割り当てるかの比率は、費目によって異なるが、減価償却費の場合は、53%が家庭部門(規制部門)に割り当てられる。したがって、家庭部門に割り当てられるのは238.5億円となる。家庭部門の総収入は2兆4666億円なので、238.5億円は、その1%弱(0.97%)である。つまり、原発関連資産の減価償却費を総括原価から除くと、電気料金の値上げ幅を1%程度圧縮できる。これは大きい。

 筆者は、原発関連資産の減価償却費を、電気料金算定の基礎となる総括原価に算入するかどうかについては、「除くべし」という議論も「入れるべし」という議論もともに成り立ちうると考える。「除くべし」という議論は、今回の燃料費の値上げ申請が、原発を停止することによって、原価に占める燃料費等の割合が高くなったことを理由としており、少なくとも部分的には、原発が使えないことが前提となっている以上、原発関連資産の減価償却費は、電力供給に必要な費用ではないというものだろう。

「入れるべし」という議論は、原発関連資産の減価償却費は、すでに生じることが決まっているコスト(サンク・コスト)であって、原発廃止が決定されて、すべての原発関連資産に対して減損損失を計上するまでは、完全に使えない資産についての費用とまではいえないというものだろう。今、現在、不稼働資産であっても、将来的に使う可能性がある以上、総括原価に入れることにも一理ある。