この式における負債利子率は、電力会社10社の平均有利子負債利子率1.61%を使う。問題は、株主資本コストである。
株主資本コストは、資本資産価格形成モデル(CAPM)類似のモデルで推計する。
(株主資本コスト)
=(1―β)×(公社債利回り)+β×(平均自己資本利益率)
ここでいうβ値は、公社債利回りと平均自己資本利益率のあいだのウェイトである。
本来、β値は、株式市場全体の動きを表わすTOPIXなどの指標が1だけ動いたときに、その会社の株式がどれだけ動くかを表わす比率である。株式市場全体の動きとまったく無関係な株式が、もし存在するとすれば、その銘柄はβ=0となる。市場と同じように動く平均的な銘柄はβ=1である。β値が1を超える銘柄は、リスクの高い株式と考えていい。
株式投資に関わるリスクが、市場全体の変動リスクだけだとすると、株式の期待利回りは、β値だけによって決まることになる。これが資本資産価格形成モデル(CAPM)である。
(株主資本コスト)-(無リスク利子率)
=β×((市場平均期待利回り)-(無リスク利子率))
この式を株主資本コストについて解いて整理すると次のようになる。
(株主資本コスト)
=(1―β)×(無リスク利子率)+β×(市場平均期待利回り)
この式を前提にすると、電気料金決定のための株主資本コスト算定式には問題がある。公社債利回りが使われている部分は、本来は無リスク利子率でなければならないので、国債利回りだけでいい。また、βを掛ける相手は、平均自己資本利益率(ROE)ではなく、本来は、TOPIXなどの株式市場全体を表わす指標の期待平均利回りである。