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AIチームとITチームの視点は根本的に異なる
多くの組織では、ITとAIが「テクノロジー」という曖昧なラベルでひとまとめにされている。ただし、2つのグループの視点は根本的に異なることが少なくない。ITチームは統制、標準化、リスク低減を追求し、AIチームは実験、柔軟性、迅速な学習を追求する。このように相反する優先事項をそのままにしていると、意図せずに互いの取り組みを妨害することになりかねない。
本来、どちらのチームも多くの価値を提供できる。この衝突を回避できれば、企業は大きな恩恵を得られるのだ。本稿では、2つのチームの意見が異なる3つの典型的な事例を紹介し、両者を連携させて、競争優位性につながる真の洞察を引き出す方法を示す(筆者たちがアドバイザーとして関与した企業の名称は、機密保持の観点から変更している)。
「データ」の定義が異なるケース
金融サービス、物流、不動産、消費者向け小売りなど、多角的に事業を展開するコングロマリットのバリンガ・グループでは、「データなしにAIは成り立たない」という当たり前の事実に異論を唱える者はいない。意見が分かれるのは、「データ」が何を意味するかという点だ。
バリンガのAI部門の責任者、ヘレンは率直に語る。「ITチームは、私たちがAIで扱っているものをデータとは見なしていません。彼らの世界は定量的で、表と列とグラフがすべてです。私たちがAIに使っているデータは、定性的で、文脈に富み、会話形式のものです。彼らにとって、それはデータのうちに入らないのです」
バリンガの従来の考え方は、正確性、監査可能性、統制が何より重視される規制の厳しい環境では、同社に大きく貢献してきた。しかし、顧客体験や顧客の財務状況、パーソナライズされたサービスへと重点を広げるにつれて、新たな形態のデータが現れた。
これには顧客とのやり取り、コールセンターの通話記録、サービス契約、顧客行動から得られる知見などが含まれる。いずれも非構造化された定性的なデータであり、従来のシステムにはすっきりと収まらない。生成AIやエージェント型AIを動かしているのは、ワークフロー、文書、通話記録、メールなど、IT部門が構築・管理する整然としたスプレッドシートの外側にあるデータなのだ。
「正確性と標準化を最優先するように訓練されてきた従来のデータチームは、このように構造化の度合いが低いインプットも、正当なデータであると認識するのが難しいのです」とヘレンは指摘する。その影響は「単なる哲学的な問題に留まりません。バリンガの各部門が、何を重要とするかについて、異なる前提で動き始めたのです」。顧客に近い事業部門は、顧客体験に基づく、より豊かなデータの取り込みを推進している。一方、IT部門はより狭い定義を維持している。
その結果、摩擦が生じ、取り組みの進展が遅れ、協力してAIを機能させる中心となるべき2つのチームの溝が広がっている。
バリンガが行ったこと
バリンガの経営陣は、データに関する問題を全社レベルで捉え直すという方針を明確に打ち出した。ITチームとAIチームの間で「データ」の定義をめぐる議論に決着をつけるのではなく、「どのような形であれ、顧客のための意思決定を改善する情報とは何か」という共通のビジネス成果に、組織全体で目を向けたのだ。
ヘレンは次のように説明する。「まず、全社的なデータインベントリ(保有するデータ資産の一覧)を正式に拡張し、コールセンターの通話記録、サービス記録、契約書、メール、ワークフローのログなどの非構造化データも対象に含めて、構造化データベースと同等の戦略的資産として位置づけました」
そのためには、既存のデータ標準を定性的な入力データにも適用するという、経営レベルのガバナンス上の決定が必要だった。これにより、ITチームに必要な統制の枠組みを維持しつつ、AIチームがすでに扱っていたデータを正式なデータとして認めることができた。
バリンガのAI導入計画には、AI機能を既存の業務ワークフローと並列して扱うのではなく、ワークフローそのものに直接統合するという基本原則が盛り込まれた。カスタマーサービスの対応業務、保険金請求の査定、ファイナンシャルアドバイザリーのツール、物流のスケジューリングについては、AIの活用に適しているかどうかだけでなく、AIを業務プロセスにどこまで深く組み込めるかという観点からも評価した。







