なお、以上の議論は、手数料水準が適正であれば、まったく成り立たなくなり、現実には何の問題もないことになる。日本郵政は上場にあたって、この点について、明確な説明を求められるのではないかと想像する。
ゆうちょ銀行の金利リスク
ゆうちょ銀行には「定額貯金」という魅力的な商品がある。定額貯金は、預け入れ後6ヵ月たてば、いつでも払い戻しができ、最長10年まで預け入れることができる半年複利の貯金で、預け入れ時の金利が払い戻し時まで適用されるという金融商品である。預金者には、無償の解約オプションがついており、しかも、金利下落リスクがない。
つまり、金利が上がったときだけ、まったくコストを掛けることなく、高金利の商品に移し替えることができるのに対し、金利が下がったときには、従前の金利を受け取り続けることができるのである。ゆうちょ銀行から見れば、定額貯金は、商品であると同時に、資金調達を意味する負債である。したがって、ゆうちょ銀行は、金利上昇時には、解約が増えて資金が流出するか、預け替えられて調達金利が急激に上昇するリスクを背負っていることになる。
これに対して、ゆうちょ銀行の資産は、主として国債で運用されている。ゆうちょ銀行が保有する債券の平均残存期間がどれくらいか、明確な資料はないものの、ゆうちょ銀行のディスクロージャー誌の数値から、大雑把に推測することはできる。
貸借対照表に対する注記に「金銭債権及び満期のある有価証券の決算日後の償還予定額」というものがある。これによると、1年以内償還の金額は53.9兆円、1年超3年以内が45.7兆円、3年超5年以内が32.4兆円、5年超7年以内が22.1兆円、7年超10年以内が25.8兆円、10年超が5.1兆円である。貸借対照表上の有価証券が175.9兆円あり、損益計算書上の有価証券利息配当金が1.9兆円なので、荒っぽくいえば、運用金利は1.1(1.9÷175.9)パーセントである。