1年以内、1年超3年以内、3年超5年以内、5年超7年以内、7年超10年以内、10年超という期間の平均をそれぞれ、0.5年、2年、4年、6年、8.5年、15年と仮定しよう。割引率1.1パーセントを使って、各期間の償還額の現在価値を計算すると、それぞれ、53.6兆円(53.9÷(1.011の0.5乗))、44.7兆円(45.7÷(1.011の2乗)、以下、考え方は同じ)、31.0兆円、20.7兆円、23.5兆円、4.3兆円となる。この現在価値で重みをつけた平均残存期間(デュレーション)を計算すると、約3.5年((0.5×53.6+2×44.7+4×31.0+6×20.7+8.5×23.5+15×4.3)÷(53.6+44.7+31.0+20.7+23.5+4.3))である。

 詳しくは説明しないが、将来キャッシュ・フローの現在価値のグロス金利(金利に1を足したもの)に対する弾力性(現在価値の変化率をグロス金利の変化率で割ったもの)は、現在価値で加重平均した平均残存期間となる。つまり、平均残存期間・デュレーションは、金利感応度の指標である。

 大雑把には、有価証券残高175.9兆円にデュレーション3.5年を掛け、それにさらに1パーセントを掛ければ、金利が1パーセント上昇したときのゆうちょ銀行の有価証券評価損を概算できることになる(グロス金利が1.011から1.021に上昇したときの変化率は約1パーセントである)。つまり、金利1パーセントの上昇で、ゆうちょ銀行は6.2兆円(175.9×3.5×0.01)の評価損を被るということである。これは、ゆうちょ銀行の現金預け金+コールローン残高の5.4兆円を上まわる。あるいは、1.5パーセント、金利が上昇すると、ゆうちょ銀行の純資産額9.1兆円が消滅してしまうと言い換えてもいい。

 もっとも、金利リスクは、日本国中の金融機関が抱えているリスクであって、ひとり、ゆうちょ銀行についてだけ、これを強調するのはフェアではないだろう。また、これは債券価格の下落を意味するだけで、ただちにキャッシュ・フローに影響するわけでもない。

 そして、国債価格が下落するような緊急時に、政府が特例措置を発動すれば、有価証券を市場価格で評価する時価評価から償却原価評価(注)に切り替えることで、見かけ上は含み損を隠すことができる。また、調達サイドの金利がただちに上昇しなければ、この有価証券評価損はある程度、減殺される。しかし、貯金総額175.6兆円の38.2パーセントを占める定額貯金67.0兆円が不安要因なのは事実であろう。

(注)債券の取得価額と額面価額との差額を満期までの期間に、毎年配分して計上する方法。