ヘイグループは「有能なリーダー=結果を残す人々」に共通してみられる行動特性を整理し、6つのリーダーシップスタイルが存在することを明らかにしている。ここでは紙幅が限られるので個別のスタイルについての詳しい解説に省くが、注意してほしいのは、一見すれば矛盾するようなスタイルが並列で記述されているという点だ(図表1)。

(図表1)

 例えば「指示命令型」は、部下に対する即座の承諾と服従を求めるというリーダーシップだが、これは組織の長期的な方向性やありたい姿を示して鼓舞する「ビジョン型」とは、正反対のリーダーシップスタイルと言える。フランスの思想家・文学者のサン・テグジュペリは「もし船を造りたいのなら、男たちをかき集めて森に行かせ、木を集めさせ、のこぎりで切って厚板を釘で留めさせるのではなく、海へ漕ぎ出したいという情熱を男たちに教えねばならない」という言葉を残しているが、これは典型的な「ビジョン型」リーダーの主張だ。

 リーダーシップの議論では、一般的にこういった「ビジョン型」のスタイルが「指示命令型」のスタイルよりも好ましく語られることが多いのだが、何らかの理由で喫緊に海にこぎ出さなくてはならない状態、例えば火山が噴火して溶岩流が近付いているような状況では「情熱を教える」よりも、とにかく森に行って木を切って船を組み立てさせる「指示命令型」のリーダーシップスタイルが必要である。つまり、あくまでリーダーシップスタイルの是非はその文脈=コンテキスト次第で決まる、ということだ。