テクノロジーのソーシャルメディアとしての側面と仕組みとしての側面を組み合わせた場合に何ができるのか、ここでいくつか例を示そう。私はハーバード・ビジネススクールのボブ・エクレスと共同で、インドを中心とするITサービス企業のコグニザントが構築した新しい職場環境に関する教育用事例を発表した。社内ではC2と呼ばれる〈コグニザント2.0〉は、画面の片側にプロジェクト・タスク管理構成を表示し、画面の反対側に、タスクを遂行するうえで役立つソーシャルリソースを表示する。これにより、たとえばクラウドコンピューティングにかかわるITアーキテクチャー問題に取り組む担当者は、そのトピックに関する掲示板に質問を投げかけたり、あるいはクラウドに詳しい社内の従業員のプロフィールを閲覧したりすることが簡単にできるようになる。コグニザントの内部分析によると、最も生産性の高い従業員が、C2を最も頻繁に利用しているという。

 CRMやその他トランザクション集約型機能向けにサービス・アプリケーションを提供するセールスフォース・ドットコムは、近年、〈Chatter〉(チャター)と呼ばれるソーシャルメディア・ツールの提供を開始した。同社はこのツールを自社業務の中で幅広く活用し、従来のアプリケーションが課すトランザクション・タスクに、有益なソーシャルメディアとしての側面が補完されたと感じている。たとえば営業担当者は、顧客への大規模な売り込みの可能性について入力する前に、Chatterのディスカッションに参加することが可能だ。この顧客を知る他の営業担当者と連絡をとることにより、見積りの精度を上げることができるだろう。同社の営業担当者の多くは、常時Chatterストリームを有効にしているため、担当顧客やフォローしている事業体のアカウントのステータスに変更があった場合、自動的に通知を受ける。コグニザントと同様に、セールスフォース・ドットコムではChatterを最も頻繁に利用する従業員の生産性が最も高いのだ。また、Chatterはワークツールとして利用され、ビジネスに無関係な私的コメントはほとんど見られない。

 いずれの事例においても、テクノロジーのソーシャルメディアとしての側面と仕組みとしての側面を組み合わせることにより、オンラインのソーシャル・アクティビティが業務の達成に向けて利用されている。仕組みを構築することによって、誰もが目の前の仕事をより意識するようになる結果、単に社交目的で使いたいという欲求が制限される。こうした仕組みの下では、大半の従業員が仕事とは関係ない個人的な話をすることをためらうような文化的背景が生まれるのだ。

 純粋なソーシャル・アプリケーションでは、ソーシャルメディアとしての側面が強すぎる。一方、純粋な構造化アプリケーションでは、がんじがらめの仕組みが提供されるだけである。2つの側面を組み合わせてこそ、業務を最大限に迅速かつ効果的に遂行することができるのだ。このような両者の組み合わせは、今後さらに増えてくるに違いない。


原文:Want Value From Social? Add Structure November 8, 2010