イノベーションの近親交配を避けるには、3つの単純な方法がある。
1.社内で新たなつながりを強制する
大企業は非常に多様性に富む場所である。さまざまな職能部門、地域、階層、部署から人を集めて一緒にする。そこから現状を突破する思考が生まれる可能性がある。たとえばIBMの有名な成功事例として「イノベーション・ジャム」がある。これは散在する何千人もの社員、社外の専門家、そして社外にいる友人や家族さえも結集させるものであった。こうしたセッションを行うために、法外な出張予算を使う必要はない。いまではオンラインでこうしたコラボレーションを可能にする手段が多く提供されている。
2.部外者を招き入れる
新市場に参入した企業は判で押したように、その市場をよく知る者であれば容易に避けられる間違いを犯してしまう。これは毎度のことだ。社外から厳選して招いた人材をイノベーションの活動に参加させれば、取り組みを根本から変革できる。社内昇進を重んじることで有名なプロクター・アンド・ギャンブルでも、新たなビジネスモデルを模索する際には社外の人材を活用するだろう。
3.顧客あるいは他のステークホルダーを巻き込む
イノベーション活動に顧客を関与させることには、明らかに危険が伴う。顧客はその企業について、一定の固定観念を抱いているかもしれないからだ。だがエリック・フォン・ヒッペルの研究で結論づけられているように、多くの業界では顧客のほうが、企業よりも速いペースでイノベーションを起こすのだ。熱心な自転車愛好家たちが購入した自転車のフレームをいじったり、創意あふれるシェフが開発したメニューさえも改良されたりする例を見るとよい。「顧客との共同制作」というと少し陳腐な常套句に響くかもしれないが、大きな見返りを生む可能性があるのだ。
このようにして、イノベーションの近親交配がもたらす悪影響を避けるとよい。積極的に異種交配し、さまざまなイノベーションの取り組みが花開いていくのを期待して待とう。