みずからを取り巻く全体像を理解する

HBR(以下色文字):どうすれば、サプライチェーンにおける水やエネルギーや廃棄物などの問題に、組織が本腰を入れて取り組むようになると思いますか。

センゲ(以下略):そのような問題が戦略的であると、つまり、会社の将来を左右すると思われるようになれば、組織も本気になるでしょう。私は「持続可能性」という単語をできるだけ使わないようにしていますが、それは、この言葉がありきたりすぎて、まともに話を聞いてもらえなくなるからです。

 このような問題に現実的に取り組もうとすれば、イノベーティブでありながら──すなわち、製品やプロセスやビジネスモデルを組み直すスキルとビジョンを備えていながら──自社のビジネスを取り巻く状況も理解している社員が必要です。そのような社員は何よりもまず、なぜこうした取り組みが大切なのか説得力を持って語れる必要があります。

 企業は投下資本に対する収益率を最大化するために存在するという考え方──残念ながら、これはビジネス・スクールでは受けがよい考え方です──に社員が捕らわれ、短期的な経営成績を重視するようでは、大した成果は望めません。

 ほとんどの企業に対して、発想の大転換を説いておられますね。

 私にとって、それがリーダーシップの基本中の基本なのです。自分たちが何者で、何のために存在するのかと問うことが出発点なのです。