サマリー：もはや環境に配慮した企業の優位性は言うまでもなく、その内容が問われている。環境への配慮の具体策については、各種団体やNPOなどが基準づくりを始めている。企業はそのような基準に対し受動的に対応しようとする... もっと見るだけでは、環境に配慮しながら事業を強化することはできない。環境基準をめぐる「競争」は熾烈を極めているのだ。環境基準は多数存在するが、いまだ業界の標準として認知されているものは少なく、さまざまな観点から制定された基準が千差万別に存在する状態が続いている。このようななか、環境基準への積極的な対応をする企業こそ、新たな競争優位を築くことになる。本稿では、この基準をめぐる競争──グリーン・フレンジ──で勝利する方法を紹介する。具体的には、企業は自社のケイパビリティと業界標準の現状という2つの視点から、自社の基準への対応を、4つの選択肢のなかから決めることである。4つとは、既存の基準の採用、既存の基準の修正、業界基準の新しい定義づくり、新たな独自基準の策定である。 閉じる
こうしている間にもどこかのだれかが、あなたの業界やビジネスや製品をめぐって、持続可能性（サステナビリティ）の意味を明確に定義づけている。
グリーン競争は、繊維、通信、農業、自動車、ハイテクなどの大方の分野において、「地球に優しい製品の開発競争」から「そもそも地球に優しい製品とは何かをめぐる戦い」へと移行しつつあるのだ。
その定義は、業界、企業、製品の種類ごとに異なるかもしれないが、どのような企業であれ、議論に参加し、ルールづくりに関与しなければ、満たされない持続可能性基準であると評価されるリスクを負うことになる。もっと悪ければ、新しい環境保護を理想と掲げた模範生として戦略的に評価されている、抜け目のない競争相手に後れを取ることになりかねない。
「持続可能性」を実現する戦略
現在のサステナビリティ経営の原点になった論文と言っても過言ではない。1990年代、企業では、「環境重視」は意識されていたものの、それは業績向上以外に考えるべき事項の一つという位置付けであった。そんななか筆... もっと見る者のスチュアート L. ハートの「持続可能なグローバル経済の構築」というメッセージは、環境への取り組みが新たな次元に入ったことを示すものであった。ハートは、拡大するグローバル経済が抱える危機の増大を指摘するとともに、それらの危機が企業にとってチャンスであること、そこに事業体である企業こそが貢献できることを明確に示したのだ。本稿では、グローバル経済が、市場経済、生存の経済、自然の経済の3つの構造から成り立っていることを指摘する。つまり経済の多面性を企業が理解することを求めるのだ。そのうえで、環境戦略の3つの段階を示す。それらは、汚染防止、プロダクト・スチュワードシップ、クリーン・テクノロジーである。ハートの論文から16年経ったが、その骨子はいまだ持続可能性の議論の中心となっている。1997年にマッキンゼー賞を受賞した記念碑的論文を本邦初公開する。 閉じる
