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小手先の環境対策では逆効果につながる
2000年代初め、香港を本拠とする世界有数のプレミアム・コットンのシャツ・メーカーであるエスケルはジレンマに陥っていた。ナイキやマークス・アンド・スペンサーなどのアパレルや小売チェーンの顧客から、同社の環境や社会面の取り組みが問われるようになっていたのだ。
シャツに使うオーガニック・コットンの比率を増やすよう求める顧客が増えていたので、エスケルのリーダーたちは、他の顧客からも監視の目が注がれるようになるだろうと予想していた。しかし、綿花には大量の水や農薬が必要である。とりわけ、エスケルのコットン向けに綿花を栽培し加工している、貧しいが急速に発展している国々ではそうだった。
エスケルの経営幹部は、それまでも真摯に取り組んできた社会や環境面の持続可能性の活動をいっそう強化したいと思っていたが、高級素材の超長繊維綿を供給する農家に水や肥料、農薬の使用量を減らすように要求するだけでは駄目だと気づいた。そのような指示を出せば、農家や彼らが住む村にとって破滅的な影響をもたらしかねなかった。