ナレッジ・ワークを変えた3つの波

 30年に及ぶナレッジ・ワークの進化が一人の人間のキャリアに凝縮されている様子を見たければ、ハイジ・マカロックのキャリアをたどってみるといい。

 大学の教養学部を卒業したマカロックは、まず、企業のマーケティング部門に就職した。次に、広告代理店に転職し、それまで彼女が勤めていたような企業に社外からサービスを提供する立場になった。自分の家庭を持った後は、それまでいたような世界から身を引いて起業に挑戦することにし、年代物の小さなホテルを復元して売却する事業を興した。さらに、その数年後には再び広告代理店の仕事に戻り、グローバルなプロジェクト・チームで専門能力を発揮してバイス・プレジデントに昇進した。そして、現在の彼女はといえば、また新たなベンチャー事業に取り組んでいる。

 コンサルタントとして独立した彼女は、2012年7月、トロント中心部に自分と同じような層を狙った「ブティック型コラボレーション作業空間」を開設したのである。そこはナレッジ・ワークに携わるモバイル・ワーカーたちの憩いの場となっている。彼らはどこでも自分の仕事を行えるのだが、最も成果を上げられる場所に引き寄せられるのだ。そこは、自分と同じクリエイティブな人々と机を並べ、それぞれが自分にとって大事な仕事に没頭できる場所である。