キャリアをめぐる新たな常識

 私のキャリア・パスは一風変わっている。ウォール街の秘書から始まり、同社の投資銀行部門で昇進を果たした後、株式調査アナリストになるためにやり直した。8年後にその職を辞し、テレビ番組の制作や児童書の執筆に従事。最終的に、仕事や人生のつれづれをブログにつづるかたわら、教会で知り合った人物の支援を得てヘッジ・ファンドを共同で創業した。いわゆる伝統的な出世コースではないが、おそらくこれがニュー・ノーマル(新たな常識)なのだろう。

 アメリカをはじめとする先進資本主義国の多くでは、一生同じ会社で勤め上げる「会社人間」という概念が過去のものとなって久しい。アメリカ労働省の労働統計局によると、1983年以降、25歳以上のアメリカ人の平均勤続年数は5年前後で定着し、男性はやや短くなっている。

 労働統計局の別の報告書によると、57~64年に生まれたベビー・ブーム世代は、18~44歳までに平均11の職場を経験している。76年から2006年まで長期的に雇用を追跡した調査でも同様の結果が出ている。勤続年数が最低でも10年や20年という人の割合は大幅に減少している。