ピカソの教えに従うことは簡単だ。解決すべき問題を設定したら、「その問題をすでに解決したことがある人」を世界中から探し出せばよい。社内にはおらず、自社の業界にも、あるいは国内にもいないかもしれないが、どこかにはいる。彼らを見つけ、学ぶのだ。

 2つ目の変更点は、はっきりとはわからないだろうが、ロバート・N・アンソニー・シニアの前にある飾り額の文言が書き換えられた。以前は長い文章で、個人よりも企業に向けられたものだった。企業への教訓は重要ではあるが、新しい文言はもっと短く、個人に向けられている。それはEssentials of Accountingが挙げる第一の原則、「貸借一致の原則」から始まる。14世紀の北イタリアで生まれた会計学の根本的な原則は、どの借方にも対応する貸方があり、資産には必ず負債が対応している、というものである。

 どんな強みも必ず弱みを伴っており、どの能力にも障害がある。イノベーターはこのことを肝に銘じておく必要がある。

 イノベーションを独りで行うものと考えてはいけない。まず、取り組んでいるイノベーションの棚卸をして、自分の強みと弱みを正直に分析しよう――あくまで正直に。次に、自分が持っていない能力を提供してくれる人を探し、人脈を築こう。ジョブズにとってのウォズニアック、ゲイツにとってのバルマー、ザッカーバーグにとってのサンドバーグのような人物を探すのだ。偉大なイノベーターには、自宅のガレージでコツコツと努力を重ねるイメージがつきまとう。しかし最良のイノベーションは、相互にスキルを補い合うチームによって生み出される。

 イノベーションのラシュモア山に、ぜひお越しを。ラフリー、ピカソ、タイソン、アンソニー・シニアのシンプルな教えに従えば、イノベーションを成功させる確率は高まるだろう。


HBR.ORG原文:The Mount Rushmore of Innovation May 22, 2012
 

スコット・アンソニー(Scott Anthony)
イノサイト マネージング・ディレクター
ダートマス大学の経営学博士・ハーバード・ビジネススクールの経営学修士。主な著書に『明日は誰のものか』(クリステンセンらとの共著)、『イノベーションの解 実践編』(共著)などがある。