最も影響力のある経営思想家「Thinkers50」第2位、W.チャン・キムとレネ・モボルニュの世界的ベストセラー『ブルー・オーシャン戦略』の第1章を抜粋・紹介する本シリーズ(全5回)。最終回は、ブルー・オーシャン戦略を策定するための指針、そして、本書全体の紹介をもって締めくくる。

 

ブルー・オーシャン戦略の策定と実行

 経済状況を見るかぎり、ブルー・オーシャンを切り開く必要性は高まっているが、一般には、既存業界の枠をはみ出してまで冒険を試みると成功の見込みは小さい、と考えられている(26)。しかし、本当に重要なのは、ブルー・オーシャンをいかにうまく泳ぎきるかだろう。どうすれば、体系的な取組みを通して事業機会を最大限に引き出し、同時に、ブルー・オーシャン戦略の策定と実行にともなうリスクを最小限に抑えられるのか。いかに事業機会を最大化し、リスクを最小化すべきか、その秘訣を理解しないままブルー・オーシャンを創造・支配しようとしたのでは、ねらいどおりの成果を得られる可能性は低いだろう。

 もちろん、戦略はリスクと無縁ではありえない(27)。戦略には機会とリスクの両方がつきもので、それはレッド・オーシャンだろうとブルー・オーシャンだろうと同じである。とはいえ現状では、レッド・オーシャンで成功するためのツールや分析のフレームワークばかりがあふれており、ブルー・オーシャンについてはあまりに手薄ではないだろうか。このような状態が続くかぎり、たとえブルー・オーシャンをすぐにでも創造しなくてはならないとしても、企業はレッド・オーシャンでの戦略を重視する姿勢を変えそうもない。おそらく、このような事情からだろう。「業界の枠組みを打ち破ってはどうか」という声が以前からあるにもかかわらず、こうした声に真剣に耳を傾ける企業はいまだにきわめて少ない。

 本書ではこのような偏った現状に対処するために、筆者たちの主張に沿った方法論を示していく。ブルー・オーシャンで繁栄を手にするための指針と分析手法を紹介するのである。

 第2章では、ブルー・オーシャンを創造・支配するのに欠かせない分析のツールとフレームワークを提示する。ほかの章でも必要に応じて補助的なツールを紹介するが、第2章で紹介する方法論は基本をなすもので、全編を通して用いることになる。ブルー・オーシャンを泳ぐためのこれらツールやフレームワークは、事業機会とリスクの両方を念頭に置いており、それらを明確な目的を持って使いこなした企業は、業界や市場を根底から変えられるはずである。第3章以降では、ブルー・オーシャン戦略をうまく策定・実行するための指針を示すとともに、それを分析手法と併せてどのように実地に応用すればよいのかを述べていく。