優れたブルー・オーシャン戦略を策定するための指針は、大きく4つに分けられる。第3章から第6章ではそれらを1つずつ説明する。第3章では、既存の枠組みにとらわれずに多彩な業界の粋を集めて、競争のない市場空間を体系的につくり出し、探索リスク(search risk)を減らすための道筋を示す。これまでの競争には6つの枠組みがあったが、それらの枠組みを超えた発想を通して、いかに事業として大きな意味を持つブルー・オーシャン戦略を切り開き、競争を避けるかを説くのだ。具体的には、①代替財や代替サービスを提供する業界に目を向ける、②さまざまな戦略グループを見渡す、③従来とは異なる買い手グループに目を向ける、④補完財や補完サービスを見渡す、⑤機能志向あるいは感性志向を問い直す、⑥時間軸を長くする、などである。

 第4章では、それまでの延長を抜け出してバリュー・イノベーションを実現するためには、戦略策定プロセスをどう組み立てればよいかを示す。既存のプロセスには、数値計算に明け暮れて結局は小手先の改善にしかつながらない、との批判も多いため、本書ではそれに代わる新しい戦略策定プロセスを紹介したい。そこでのねらいはプランニング・リスク(planning risk)を低減させることである。数字や専門用語といった1本1本の木ではなく、森全体を見られるように、ビジュアルを用いた、4つのステップからなる戦略策定プロセスを提案する。これを活用すれば、ブルー・オーシャンでの事業機会をつかみ取るための戦略が立てられるはずだ。

 第5章では、ブルー・オーシャンを最大化するための方法を論じる。各企業は従来、既存顧客の嗜好によりよく応えようとして、市場セグメンテーションに工夫を凝らしてきたが、ここではできるかぎり大きな市場を開拓する目的で、あえてこの慣習に挑む。従来の慣習に従ったのでは、ターゲット市場は狭まっていくが、本書では逆に、需要をかき集める方法を示そうというのである。具体的には、顧客ごとの違いではなく、非顧客層の大きな共通点に着目して、ブルー・オーシャンの最大化をめざす。広い広いブルー・オーシャンを生み出して、需要を解き放てば、規模のリスク(scale risk)は限りなく抑えられる。

 第6章のテーマは、数多くの買い手にきわめて大きな価値をもたらし、しかも利益を上げながら成長するための頼りになるビジネスモデルを生み出すために、いかに戦略を組み立てるか、である。ブルー・オーシャンから利益を上げられるように、手堅いビジネスモデルをつくろう、というのだ。ここではビジネスモデルにまつわるリスク(business model risk)の低減をめざす。第6章では、戦略を組み立てる際の手順を詳しく追い、新しい事業領域で自社と顧客がともに利益を得られるようにする。そのためには効用、価格、コスト、導入といった項目を押さえることになる。

 第7章と第8章では、ブルー・オーシャン戦略を効果的に実行するための指針に話題を移す。特に第7章ではティッピング・ポイント・リーダーシップ(tipping point leadership)を紹介する。これは、ブルー・オーシャン戦略を実行するうえでの組織面のハードルを乗り越えるために、いかに組織を動員していくか、というものである。すなわち組織面のリスク(organizational risk)への対処法だ。リーダーやマネジャーに、限られた経営資源や時間的制約のもとでも、従業員の意識、ヒト・モノ・カネ、士気、利害関係などの障害を克服できるよう、ノウハウを示そうというのである。