第8章で扱うのは、実行を通して得た教訓を戦略プランニングに活かす、というテーマである。これを実現すれば、人々はブルー・オーシャン戦略に従い、その実行に尽力しようという意識を強め、そうした意識が組織の深いところにどっしりと根を下ろすだろう。第8章では、主に公正なプロセス(fair process)という概念を紹介する。ブルー・オーシャン戦略のもとでは、いやがうえにも現状から脱皮せざるをえない。このため、公正なプロセスを活かして従業員の士気を高め、ブルー・オーシャン戦略の実行に求められる自主的な協力を引き出せば、戦略の策定・実行をいかに円滑化できるかを述べる。従業員の姿勢や振る舞いに関係したマネジメント・リスク(management risk)の低減をめざすのだ。
ブルー・オーシャン戦略をうまく策定・実行するための6原則と、それぞれの原則がどのようなリスクに対応したものであるかを、図表1-4にまとめてある。
続く第9章では、ブルー・オーシャン戦略のダイナミズム、つまり持続や刷新といった側面に光を当てる。
ではさっそく第2章に移りたい。第2章では分析のための基本的なツールやフレームワークを提示する。いずれも、ブルー・オーシャン戦略の策定や実行に役立つもので、本書全体を通して使うことになる。
【原注】
(26)文脈は異なるが、新たな市場に飛び込むのは危険が大きいとする主張もある。一例としてSteven P. Schnaars(1994)は、市場パイオニアは模倣者に対して弱い立場に置かれる、と指摘している。Chris Zook(2004)では、中核事業からかけ離れた事業への多角化はリスクが大きく、成功する可能性は低いとされている。
(27)たとえばInga S. Baird and Howard Thomas(1990)は、戦略上の判断はすべてリスクをともなう、と論じている。
(c) Chan Kim & Renée Mauborgne
Excerpt from Blue Ocean Strategy by Chan Kim & Renée Mauborgne
Japanese translation rights arranged with Harvard Business Review Press
through Tuttle Mori Agency inc., Tokyo
無断転載・複製を禁ず
【書籍のご案内】
『ブルー・オーシャン戦略』
~競争のない世界を創造する
世界100カ国超の先進企業に採用された、不朽の名作。血みどろの戦いが繰り広げられる既存の市場「レッド・オーシャン」を抜け出し、競争自体を無意味なものにする未開拓の市場「ブルー・オーシャン」を生み出す戦略を提示。新市場を創造する方策を初めて体系化することに成功した本書は、戦略論のバイブルとしていまなお世界中で読み継がれている。
【目次】
第Ⅰ部 ブルー・オーシャン戦略とは
第1章 ブルー・オーシャンを生み出す
第2章 分析のためのツールとフレームワーク
第Ⅱ部 ブルー・オーシャン戦略を策定する
第3章 市場の境界を引き直す
第4章 細かい数字は忘れ、森を見る
第5章 新たな需要を掘り起こす
第6章 正しい順序で戦略を考える
第Ⅲ部 ブルー・オーシャン戦略を実行する
第7章 組織面のハードルを乗り越える
第8章 実行を見すえて戦略を立てる
第9章 結び:ブルー・オーシャン戦略の持続と刷新
巻末資料A ブルー・オーシャン創造の歴史的形態
巻末資料B バリュー・イノベーション:戦略の再構築
巻末資料C バリュー・イノベ―ションの市場ダイナミクス
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