3. 難しさを過小に考える
「これは当初の予想よりはるかに難しい。最初の頃はとても簡単に思えたのに」

 目標設定における楽観バイアスは、時間だけでなく、難易度にも当てはまります。何事も予想以上に長い時間を要するだけでなく、予想以上の努力を必要とします。

 真の変革には、それ相応の努力が必要となる――目標設定の際に、この事実を受け入れることが重要です。変革プロセスの早い時期に成功の対価をしっかり認識していれば、後で困難が生じた時に落胆を防ぐことができます。

4. 集中が妨げられる
「目標達成に向けて集中したいところだが、いまは他の問題をいくつか抱えてしまっている。一時中断し、この混乱が落ち着いてから取りかかったほうがいいかもしれない」

 取り組みへの集中を妨げる事象や、ほかの目標とぶつかってしまう可能性は年間を通じて必ず発生します。目標設定の際に、これらを過小に考えてしまう傾向が見られます。私はコーチングを行うクライアントに、次のようにアドバイスします。「どんな危機が生じるかはわかりませんが、何らかの危機が生じるのはほぼ確実でしょう」

 事前にそれを想定しておくのです。混乱こそが平常であると考えておきましょう。そうすれば、待ち受ける現実にうまく対処できるはずです。

5. 改善を維持できない
「改革に取り組み、たしかに改善は見られた。でも、その後放っておいたらまた元に戻ってしまった。改革をこのまま一生続けなければいけないのか」

 目標の達成に必要な労力をすべて注ぎ込んだら、次は新しい現状を維持する必要があります。この現実に向き合うのは非常に大変なことでしょう。ある有望なリーダーが、上司であるCEOにこう尋ねました。「私が引退するまで、自分の言動にずっと配慮して改めていかねばならないのでしょうか」。するとCEOは答えました。「そうです。もし君にCEOになろうという気があればの話ですが」

 これが厳然たる真実です。真の変革は多大な努力を必要とします。「応急処置」が意義ある改革に結び付くことはほとんどありません。雑音や他の懸念事項は、いつ何時でも生じます――しかも頻繁に。ある1つの行動を改善しても、すべての問題を解決することはできません。そして、真に有意義な変革を実現するには、人や組織が存続するかぎり努力し続ける必要があるのです。

 読者の皆さんは、いかがでしょう。変革をやり遂げるヒントはありませんか。ご意見をお寄せください。


HBR.ORG原文:Don't Give Up on Change September 4, 2009

マーシャル・ゴールドスミス(Marshall Goldsmith)
エグゼクティブ・コーチングの世界的第一人者
ジャック・ウェルチを始め多くの名だたる経営者を指導してきた。代表作に『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』(日本経済新聞出版社)などがある。