連載第3回目はカンヌからお届けします。今回は対談形式で、ゲストはTBWA博報堂のエグゼクティブクリエイティブディレクター佐藤カズー氏です。「広告は進化できるのか」をテーマに、カンヌで受賞したものは「もうやっちゃいけないリスト」だと思う理由、広告にイノベーションが必要な理由など、熱く議論します。
カンヌ・インターナショナル・フェスティバル・オブ・クリエイティビティに来ています。おととい、僕はカンヌの1番大きなホールでセミナーをやりました。「クリエイティブ・アルケミー(錬金術)」というテーマで、新しいメディアやテクノロジー、ビッグデータなどの激しい変化にさらされた時代にこそ大切な、前例のない課題をブレイクスルーするためのアイデアを生み出す5つのアルケミー(錬金術)ついて、2000人くらいの前で45分間、英語でスピーチしました。今はその責務から解放されたのに加え、会場や街を歩くといろんな人が声をかけてくれるので楽しい、そんな木村です。
さて、カンヌのひとつの魅力は、国内外のさまざまなクリエーターやマーケターと普段話さないような深い議論ができるところにあります。そこで、「広告は変われる」連載第3回は、TBWA博報堂のエグゼクティブクリエイティブディレクター佐藤カズー氏と「広告が今後どのように変わっていくべきか」というテーマで話しました。昨年のフィルム部門の審査員を務めたカズーさんは、昨日の授賞式では日本人で唯一PR部門とプロモ部門で受賞されています。
カンヌは過去。
木村:カンヌというのは、広告産業にとってどういう意義を持っていると思いますか?
カズー:今までのカンヌは、向こう1年のベンチマーク、つまりマーケティングの流行を知る場でした。カンヌがくれた指標はその年のマーケティングコニュニケーションの方向性を示してきたし、広告はそれでアップデートされてきたと思います。
木村:今年は、どんな変化を感じましたか。
カズー:今は、カンヌが終わったらそれは過去。カンヌで受賞したものは「もうやっちゃいけないリスト」だと思います。カンヌの報告会で、次のキーワードなどが日本にもたらされるでしょうが、今は、それを追随していたら広告業界のトレンドに取り残されてしまう気がします。ここで見たものはクリエイティブの錬金術のひとつの材料にはなるかもしれないけど、それは材料でしかない。
木村:なるほど、確かに、広告産業のトレンドの変化スピードは格段に早くなっているのを感じます。昔はカンヌで世界の様々な新しいコミュニケーションに出会って、それを自国に持ち帰ったものだけど、今はそのようなキャンペーンはカンヌに来る前に、すでにサイトやYouTubeで紹介されている。カンヌが何を選ぶか、カンヌは何を発信するのかが世界中にリアルタイムで発信されていくイメージですね。