連載第5回目は博報堂ケトル・木村健太郎氏と電通・岸勇希氏との対談です!ブランデッド・コンテント&エンタテイメント部門の審査員も務めた岸氏が、この部門で重要とされた「ストーリー」について語ります。また、この部門は日本人には難しい部門であるとも。「コンセプトの解像度を下げる」とは何を意味するのでしょう。

 

 7日間続いた60周年のカンヌライオン、僕にとっては10回目のカンヌも、ついに最終日を迎えました。この連載の初回で書いたように、カンヌには、フィルム、アウトドア、サイバーなどさまざまな部門があって、それぞれの部門別に毎晩のように授賞式が行われるのですが、この部門数が毎年次々と増え続けているというのがカンヌの特徴です。それは広告領域がどんどん拡大していることを意味しているので、新設される部門はその時代の広告産業の最先端の領域なのです。

 2012年設立されたばかりの注目の部門に、ブランデッド・コンテント&エンタテイメント部門(以下、ブランデッド・コンテント部門)というのがあります。今回は2013年その審査員を務められた、電通のシニア・クリエイティブディレクター、コミュニケーションデザイナーの岸勇希さんとお話ししました。岸さんは2013年メディア部門でゴールドを受賞されています。

ストーリーが人を動かす。

木村:審査おつかれさまでした。ブランデッド・コンテントと聞くと、映画とか番組とか、そういう広告以外のエンタメコンテントのような気がしますが、実際はどんな定義なんですか?

:映像表現に限らず、あらゆるコンテントが対象となる部門です。とは言え、昨年新設されたばかりの部門なので、今年はまさに「ブランデッド・コンテントとは何か?」について激しくディスカッションが行われました。ご存知の通り、カンヌでは新しい部門が作られると、初年度はとりあえずなんとなく審査をしてスタートして、こなしてしまうわけですが、2年目の審査員たちは、よりその部門の意味や存在意義を議論、その基準を世に示していくことを課せられます。ですから審査中は何度も何度も、ことあるごとに”What’s content?”という議論になりました。木村さんもプロモ部門の新設の翌年に審査員をやられているので、その大変さはご存知かと思いますが。

木村:はい。2007年、確かにプロモ部門ができて2年目でした。プロモーションとは一体何で、アドバタイジングとはどう違うのかを夜中まで大激論したのを覚えています。それを絶え間なく続けているからこそ、カンヌのダイナミズムが維持されているんですけどね。そういえば嶋も今年のPR部門の審査をしてるのは2回目で、実はおととしPR部門2年目の時にやってます。つまり、僕らみんな2年目の部門に呼ばれているということですね(笑)。大変だけど面白い年。で、今年はどんな結論になったんですか?