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将来を考えることに意味がない
考えないから不安にならない
編集部(以下色文字):堀江さんの行動を拝見していると、起業することが簡単そうに見えてしまいます。しかしごく普通の人の多くは、起業することに対して見上げるような高いハードルがあると考えがちです。
堀江(以下略):そうおっしゃる方が非常に多いのですが、おそらくハードルは高くないと思いますよ。最大の理由は、失敗を怖れることでしょう。しかし、失敗して悪いことがあるのでしょうか。起業に失敗すると多額の借金を背負うというイメージが広まっているようですが、いまは起業するのにそれほどのお金はかかりません。
たとえばECサイトを利用して、おいしい手づくりジャムを売るケースを考えてみましょうか。この場合、PCは自分のものを使えば新たな投資は発生しませんし、ECサイトは〈BASE〉を使えば無料です。決済手数料にしても、カード会社に支払うわずかな手数料だけで済んでしまいます。ウェブも普通のブログ・サービスでまったく問題ありません。起業する時に、多額の借金をする必要などまったくないのです。
僕も今度、30人ほどのキュレーターが本当においしい店だけを紹介するグルメ・サイトを立ち上げます。これも一種の起業だと思いますが、かかったお金はウェブ制作会社に支払う約60万円と、レンタル・サーバー代ぐらいだと思います。60万円は「多額の借金」という金額でしょうか。
たしかに僕らが起業した頃はそうした意味でのリスクはありました。いまならADSL回線並みの1.5メガバイトの光ファイバーを引くだけで月間38万円もかかりましたからね。ここまでコストが下がってくると、僕はむしろ起業しないリスクのほうが大きいと思いますね。
堀江さんの若い頃はまだハードルが高かったわけですよね。でも、企業に就職する人が圧倒的だったなか、堀江さんは軽々と起業されました。
よく老後が不安だと嘆く人がいますが、10年後、50年後のことを考えて何かよいことがありますか。僕は将来を考えることに意味はないと思っていますし、そんな先のことを考える時間もありません。考えないから不安にもならない。後先考えずにいまやりたいことを一生懸命やる。その連続でいまここに立っています。1996年にオン・ザ・エッヂを起業した時も、一大決心をして立ち上げたわけではありませんよ。
僕のことを「決断が早い」と言ってくださる方もいるようですが、決断を躊躇して何もよいことがないというだけの話です。決断が遅いのは、誤った決断をしたらどうしようと不安に思う心理から来ているのでしょうが、決断が失敗だったらすぐに修正すればいいのです。
これは〈SPモードメール〉と〈LINE〉の違いに例えるとわかりやすいかもしれません。〈SPモードメール〉では、メールを送信する時に確認画面が出てきます。一方の〈LINE〉は、送信を押したらすぐにメールが送られてしまいます。間違えたと思っても後から訂正することしかできません。にもかかわらず、人々に支持されているのは圧倒的に〈LINE〉です。その理由は何でしょうか。おそらく簡易性です。間違えて送ったと気づいたらすぐに訂正すればいい、後で取り消せばいいと考える人が圧倒的になっているのです。
起業もまったく同じです。やりたいと思ったことを決断し、すぐに実行する。ダメだったらすぐにやめる。その繰り返しです。考えて考えた挙げ句躊躇することに意味はありません。起業はだれにでもできます。躊躇する人を見ていると、自転車に乗れないんだなと気の毒に思ってしまいますね。
実際にやってみないとわからない
無理だとわかればプランBを考えればいい
いまを生きることの反問として、計画を立てるという考え方があります。アントレプレナーシップにおいて、いまを生きるという発想と計画性は両立するものでしょうか。
そもそも、何のために計画を立てるのかがわかりません。計画を立てたからといってその通りに事が進むわけではありません。むしろ計画通りに進まないことのほうが多いものです。計画は一定の目安・目標だと言う人もいますが、僕には自己満足にしか見えません。計画を立てて安心し、計画通りに進まないことにいらだつ。自分のなかで勝手に踊っているだけに見えます。
もちろん、何か新しいビジネスを実現するには、いくつかの必要な要素が存在します。それぞれの要素をいつまでに実現しなければならないかというのは、実際にやってみなければわかりません。できないことはできない、できることはできる。それは事前にわかるものではないのです。
僕がいま進めているロケット開発にしても、計算すればどれぐらいの出力が必要かわかります。その出力を出すための性能、燃料の種類、燃焼方式、ロケット本体の重量などの要素も、紙の上では正確にわかります。僕たちがやっているのは、それを実現するための開発を進めるだけです。それぞれの要素には、開発に時間がかかるものもあればすぐにできるものもあります。場合によっては開発が困難なものも出てきます。無理だとわかれば、その段階でプランBを考えればいい。スタートした時点で、できるかできないかなどというのはわからないからです。
やるべきことの優先順位を設定することはありませんか。
僕が言っているのはやるべきことを挙げて、できることをやるという発想です。最終的にすべての要素がそろわない限りそのプロジェクトは実現できないのですから、優先順位を設定することにも意味はないと考えています。時間のかかることから先に手をつけるのがビジネスの常道かもしれないですが、僕はそう思いません。そもそも何に時間がかかるか、何がボトルネックになるかというのは、やってみなければわからないからです。
堀江さんの起業に対するスピード感は尋常ではありません。アントレプレナーシップの要素として、スピード感は重要になるでしょうか。
僕はただ、自分がやりたいと思ったことをやっているだけです。それでもたしかにスピード感は重視しますね。あらゆるビジネスは、いつかだれかがやるものだと考えるからです。とはいえ、いつまでたっても実現されていない。それをスピード感をもって実現するのが、僕の役割だと思っています。
いつかだれかが実現することがいまだ実現されていないので、僕がやるだけ
起業家のなかには、人生に対する有限感が出発点になっていると言う人がいます。堀江さんも同じような感覚をお持ちなのでしょうか。
僕は基本的に死にたくありません。自分が死ぬことをイメージするのは、非常に不愉快なことだと思いますね。よくそんな不愉快なことから話が始まるなと、不思議で仕方がありません。
僕のスピード感は、やりたいことがたくさんあるからです。逆説的かもしれませんが、死ぬことを考えたら何でもやりたい。がんばってやるしかないとファイトが湧いてきます。
宇宙ビジネスもそうです。僕らが子どもの頃、だれもが自由に宇宙に行く様子を描いたアニメや映画がありました。しかも、人類が月面に降り立ったのは1969年ですから、もう44年も前のことです。僕としては、大人になる頃には火星あたりには行けると思っていたのに、まだだれも行っていません。
だれかがいつか実現するだろうと思っていたことが、いまだに実現されていないので僕がやっているだけのことです。
死を意識したくないと言いましたが、やはり元気なうちに宇宙を見たいじゃないですか。このままだと元気なうちに行けないというのが、スピード感の一因ではありますね。
いつまでたっても実現しないことを実現するのが堀江さんの役割だということですが、それ以外に起業に向かう動機はありますか。たとえば人に認められたいという承認欲求も動機の一つとして考えられると思いますが、堀江さんからあまり感じられません。
やっぱり感じられませんか。僕は昔から人にほめられたことがありません。小さい頃からほめられて育ってきたのではなく、むしろけなされながら育ったタイプなので、人に認められることがなかったのです。承認欲求と言われても、ピンとこないですね。
もともと、僕は飽きっぽいところがありました。自分のいる場所が、同じレベルのぬるま湯のように感じられると飽きてしまうのです。もっとレベルの高いところでやってみたい、もっと高みを目指したい。すぐにそう考えてしまうのです。
そうなると、自分より高いレベルにある人に囲まれている状態が続きます。「なんだよ堀江、お前はこれくらいのことしかできないのかよ」と言われる世界にいつも身を置いてきたので、人からほめられることがほとんどなかったのです。
そのほうが、僕はかえって燃えてくるのです。そこで上にいるヤツを追い抜こうと一生懸命やっていると、いつの間にか自分のレベルが上がっていきます。ふと気づくと、その集団のなかでいちばん上にいる。いちばん上に来たところで飽きてしまう。そこから出て、さらに上のレベルにある場所に行って腕試しをする。その繰り返しです。
この性格は、ビジネスの世界に入ってもまったく変わりません。ビジネスとは関係のない世界、たとえばゴルフでも同じです。
すべての分野で負けず嫌いですね。負けず嫌いだと自分で工夫しますし、周囲に負けないようにがんばってやることが苦になりません。その結果として、見える世界がどんどん変わっていきましたね。
アイデアは何もないところから生まれるのではなく、フュージョン(融合)から生まれる
最後に、堀江さんがアントレプレナーシップに大切だと考える資質についてお聞きしたいのですが。
断っておきますが、起業はだれにでもできることだと考えています。ですから、起業に必要な資質というものがあるとは思っていません。
その前提に立って僕のことをお話しすると、常に意識しているのは「マッシュアップ」というスタンスです。マッシュアップとは、まったく何もないゼロの状態から新しいものを生み出すのではなく、すでに存在するものを組み合わせることで新しいものを創造するというのが本来の意味です。
たとえば〈フェイスブック〉や〈ツイッター〉からログインし、決済サービスは〈ペイパル〉を利用し、ECサイトのシステムは〈BASE〉、情報の更新は〈アメーバブログ〉を使う。
こうした既存のシステムを組み合わせることによって、新しいビジネスを立ち上げるのも僕の役割だと考えています。
これから加速度的に進んでいくグローバル時代においては、世界じゅうに散らばるさまざまなタレントがさまざまなサービスを同時多発的に展開していくでしょう。
そのタレントやアイデアやシステムをうまく組み合わせて新しいものを生み出すことは、非常に重要な能力になってくると思います。
その意味で言えば、僕の強みはマッシュアッパー的な部分だと自覚しています。
マッシュアップに関連してもう一つ言うと、新しいアイデアはまったく何もないところから生まれるのではなく、フュージョン(融合)から生まれるということです。よく言われる「ひらめく」という状態も、頭のなかにあるさまざまな情報が有機的に結びついた結果なのです。
自分一人の頭のなかでフュージョンが起こってアイデアが生まれることもないわけではありません。しかし、それぞれの頭のなかでフュージョンを起こした複数の人が話をするなかで生まれる確率のほうが、はるかに高くなると思います。多くの人と建設的な話ができる能力も、アントレプレナーシップの要素の一つかもしれませんね。
多くの人は、アイデアを他人に話すと盗まれると誤解し、それが嫌で話をしないというのです。
言っておきますが、ここまで時代が進むと、まったくのオリジナルなアイデアなどというものは存在しません。複数の人が持つ情報や過去のアイデアの土台があるからこそ、新しいアイデアが生まれることを知っておくべきでしょう。
複数の人とオープンな場で語ることが重要だというのは、そのほうが新しいアイデアが生まれる確率が高まるからです。
そして最も大事なことは、フュージョンが起こってマッシュアップされたアイデアも、アイデアで終わらせてしまってはまったく意味がないということです。
やはり、アイデアが浮かんだらすぐに実行に移すべきです。新しいビジネスを生み出す人や、いまあるビジネスを拡大している人は、実行力という点で抜きん出ています。
最初にお話しした通り、昔と違っていまは起業にコストはかかりません。アイデアが浮かんだらすぐにやってみるべきです。現代はそういう時代だと思いますね。
(C)2013 Diamond, Inc.
堀江 貴文(ほりえ・たかふみ)
SNS株式会社オーナー兼従業員。元ライブドア代表取締役社長CEO。1972年生まれ。福岡県出身。東京大学中退。96年オン・ザ・エッヂ設立。2002年旧ライブドアから営業権を取得し、社名変更。2006年ライブドアをめぐる証券取引法違反容疑で逮捕、起訴。2011年懲役2年6カ月の実刑判決が確定、収監。2013年3月仮釈放。ライブドア時代からテレビ、書籍、メルマガなど幅広いメディアで活躍するかたわら、宇宙ロケット・ビジネスにも参入。

