連載第7回目は博報堂ケトル・嶋浩一郎氏とVoiceVision・大高香世氏との対談です!生活者の声をフィードバックする新たな方法にチャレンジしているVoiceVision。従来の市場調査とは異なるオープンな場で生活者の意見を求める意味や、企業と生活者がともにアイデアを生み出す「共創」という考え方を大切にする理由を語っていただきます。

 

カンヌから帰ってきました。7月4日にはケトルが運営する書店「本屋B&B」で「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」編集長の岩佐さんを進行役にカンヌの報告会も開催しました。

 今年評価された作品に関して嶋と木村がいくつかキーワードを上げるという趣向だったのですが、自分が今年カンヌで重要だと思ったポイントは、情報の編集権が生活者に移行していく時代に企業はどんな情報発信をしていけばいいのかということ。フィルム部門でも、PR部門でもネットでいじられやすいコンテンツをつくる事例が多く見られました。企業がどんな「いじられスキル」、「いじられ耐性」を持つかはこれからますます大事なことになっていくでしょう。また、ソーシャルメディア上の生活者の声をいかに企業のマーケティング活動に役立てるのか、これを僕は「リアクション芸」と呼んでいますが、そんな事例も数多くみられました。

 というわけで、今回はソーシャルに発露する生活者の声を企業のマーケティング・コミュニケーション活動にフィードバックする〈VoiceVision〉という会社を7月1日に設立した大高香世さんに話を聞いてみました。

ファシリテータが掘る

:大高さんは元博報堂のシニアマーケティングディレクター。マーケティングのセクションにいらっしゃったんですよね。

大高:そうです。市場調査やグループインタビューなどからターゲットのニーズを読み取り、お得意先のマーケティング戦略に活用する仕事をしていました。ソーシャルメディア時代に適した新しい生活者の声の発掘方法に〈VoiceVision〉で挑戦したいと思っています。

:ソーシャルメディアから吸い上げた生活者の声で広告キャンペーンを設計したり、商品開発やプレミアム開発をしたり、そういうビジネスを展開していきたいということですね。どういう手法でソーシャルメディアから声を吸い上げるのですか?

大高ソーシャルメディア上にコミュニティをつくり、そこに質問を投げかけ、発言の中から参加者が言語化できない欲望を見つけ出すんです。出版社の読者会員に対して質問を投げかけるケースもあります。

:それは普通の調査とどこが違うんですか?

大高:重要なのは広告会社でワークショップ運営などファシリテーターとして経験をつんだスタッフが生活者と対話をする点です。

:ファシリテーションの技術が普通の調査では発掘できない生活者の声を引き出すということですか?ファシリテーターの人がもっている技術というのはどういう点がすごいのですか?

大高:まず、コミュニティ形成のスキル。たとえば入れ歯に対して意見をくださいなんてことを突然ソーシャルメディアに投げかけても人が集まってくるわけではないですよね。