DeNA創業を経てロンドンに渡り、モバイルでの学習プラットフォームの事業を始めることにした著者。最初にやったのは仲間探しだ。知り合いの誰もいないロンドンで、著者はいかにして仲間と巡り合ったのか。


 Quipperの起業を決心したとき、たまたまロンドンに住んでいた。

 英国で創業した最大の理由がそれだ。知り合いが多く市場もわかっている日本に帰国することも検討したが、よく考えてみると、なかなかロンドンは教育系スタートアップに都合がいい。

渡辺 雅之
(わたなべ まさゆき)

京都大学在学中から発展途上国20数カ国を渡り歩き、難民支援NPOに住み込みで長期インターンをするなど経済格差や教育問題に強い関心を持つ。卒業後マッキンゼーに入社。1999年に同僚の南場・川田によるDeNA創業に参加し、以来一貫して事業戦略、マーケティング、新規ビジネスを担当。2010年に退職し渡英。ロンドンで学習プラットフォームサービス『Quipper』を創業しCEOを務める

 英国はEUに属しておりヨーロッパ中の人材をビザなしで採用できる。夢は大きく最初からグローバルな学習プラットフォーム狙いだから、異文化が融合したチームをつくりやすいのは大きな利点だ。オックスフォード、ケンブリッジを始めとする教育機関も多く、世界最大の教育会社ピアソンの本社もロンドンであることからもわかるように、実は教育産業の都である。加えて、ヨーロッパ、米国、中東、アフリカなどへの地理的なアクセスもよい。日本やアジアは遠いが、いずれ日本にオフィスをつくることでカバーできる。

 それに僕と家族はロンドンでの生活が気に入っており、長期に渡って住むことになっても問題なく、むしろ大歓迎だという気持ちがあったのも大きい。

 こうしてロンドンで創業することを決め、知り合いすらいない場所でゼロから仲間を探し始めたのが2010年の夏だ。

 とりあえず日本の友人に片っ端から声をかけ、いろいろな人を紹介してもらった。中でも特に重視したのは最初のエンジニアだ。僕はエンジニアではない。しかし、モバイル学習プラットフォームの特性を考えたら、成否のカギを握るのは高い技術力であるのは明白である。よいエンジニアの共同創業者が見つかるまでは起業しないぐらいの気持ちでエンジニア探しを数ヶ月続ける中で、ようやく出会ったのが中野(正智)さんだ。

 中野さんは少し有名なテクノロジーブログを書いていた。僕も読者だったが、何気なく読んだ2010年10月の記事に、開発拠点がロンドンと書いてあるのを発見し、コメント欄から連絡をとってパブに呼び出したのがきっかけだ。

 話を聞くとなんとロンドンのイーラーニング会社(!)で多国籍開発チームのディレクター(!)をしていて、技術はサーバからアプリまでわかり(!)、コードを書くのが趣味(!)で、あと数ヶ月で永住権が取れる(!)。おまけにベンチャーを始めることに興味が出てきたところ(!)だという。