まさに、Quipperに参加するために、ロンドンで満を持して両手を掲げて待ち構えていたような人材だと直感した僕は(誰でもそう思うだろう)、それから何度も呼び出して懸命に口説き、何とか一緒に起業してもらえることになった。
シャイで口下手だが、技術に対するこだわりは強く、反面、目的に対し合理的になれる柔軟さも持っている。共同創業して以来、中野さんとは二人三脚でやってきた。今日もQuipperの技術担当取締役として開発の陣頭指揮をとっている。
もう1人のディレクターであるTakuyaも人から紹介された。日本人だが東大を中退し英国UCLに入り直した彼は、仕事の上では英語のほうが自然らしく、社内外問わず日本語メールにも英語で返す(時々失礼だ)。苗字の「本間」で呼ぶと露骨に嫌な顔をする。
元々学生インターンという立場でQuipperに出入りしていたが、次々とマーケティング施策を当てるセンスに度肝を抜かれ、拝み倒してQuipperに入社してもらった。
元々のマーケティング担当という職務に加え、彼の最も重要な役割は、世界中からあがってくるプラットフォームに対する要件をまとめて整理したうえで優先順位をつけ、エンジニアチームと共に実装を行い、学習プラットフォームを正常で健康的に進化させることである。まさにセンスが問われる重責だ。またアカデミックや教育者と連携をとりながら、Quipperならではの学習メソッドを磨き上げていくのも彼の担当である。
中野さん、Takuyaを筆頭にロンドンには現在20人強のメンバーがいる。国籍は10カ国を超え、半分以上はエンジニアだ。社内共通語は英語だが、母国語が英語という人は少数派だし、英語が苦手な僕も何とかやっている。皆若く、気が合うこともあり、何かと理由をつけては毎週のようにパブに繰り出している。
そういえば4日前に運動会があった。皆の父親役であるスリランカ人のWisが発案したもので、チームに分かれていくつかの競技を行った。
1番盛り上がったのが、制限時間内に1枚の大きなダンボールシートからボートをつくり、チームの1人が乗り込んで近くの池で航行距離を争う競技だ。最初にインストラクターに手本となる舟の写真が示されたため、皆それに従って丸木舟タイプを競い合って制作したのだが、1チームだけ、持ち時間の半分以上をディスカッションに費やした挙句に、ダンボールを切り刻み、完全にオリジナルな弁当型の箱舟をつくったチームがあった。