アンソニーは2013年の年初に、本記事で今年の破壊的イノベーションのトレンドを予測した。3D印刷をはじめ、挙げられているいくつかは日本でも話題となったが、いずれも発展の初期段階にあり今後も目が離せない。


 一昔前までは、破壊的イノベーションへの対応に手を焼いていた企業は言い訳ができた。シンプル・便利・低価格のソリューションが地味に現れ、やがて業界を変革していくというパターンが認識されていなかったからだ。ゼネラルモーターズやシアーズ、イーストマン・コダックなどの経営陣は、破壊的イノベーターとなりうる企業を特定し対処する術を持ち合わせていなかったということだ。

 今日のリーダーは言い訳できない。ハーバード・ビジネススクールの教授でイノサイトの共同創設者であるクレイトン・クリステンセンが20年ほど前に、破壊的な変化について世界に注意を喚起したからだ。学者や実務家たちは彼の理論を足がかりとして、リーダーが破壊的な変化を早期に捕らえ適切に対処するための堅牢なフレームワークを築いていった。

 この作業を行えば、どんな破壊的イノベーションにも見られる3つの重要な瞬間が明らかとなる。

1.出現
 破壊的なアイデアが最初に誕生する時は、市場の本流から遠く離れている場合が多い。この時期には、さまざまな企業が新しいモデルを実験し、持続可能なビジネスモデルを見出そうと奮闘している。

2.台頭
 破壊的イノベーターになりうる者のうち、少なくとも1社が、業界の周縁部から中心へと歩を進める。

3.転換
 破壊的イノベーターが本流になる。この変化は、従来の市場リーダーと大きく入れ替わることで起こる場合もあるし、完全にパラレルな市場ができる場合もある(後者の場合、新たな市場は従来の市場よりも大きくなる。破壊的イノベーションにはその分野を民主化する力があるためだ)。

 たとえば、グーグルは最終的には、メディアビジネスのあらゆる部分を変革する破壊的勢力となった。今日、「検索」として知られるものの発端は1990年代初期にまで遡る。当時は、アーキーやゴーファーなどの名前でサービスが提供されていた。1990年代終盤には、検索はヤフー、アルタビスタ、グーグルの台頭によって成長したが、本当のお披露目パーティーとなったのは、グーグルが検索結果を有料広告と結びつけるビジネスモデルに磨きをかけた時だ。企業はアドワーズのオークションを通じて、広告を購入するようになった。2000年代中頃までには、グーグルは広告業界で中堅の勢力となり、2000年代の終わりには従来型の広告企業の大半をしのぐ売上げをあげるようになった。