HBR:人の手を介在させることと、テクノロジーに主導させることのバランスについてお尋ねします。現在は個人向けに設定できるツールがたくさんありますが、それを実際に価値あるものにするには、どうすればいいのでしょうか。

 多くのテクノロジーは販売地点にこだわっています。私はいつも言うのですが、販売地点に到達するまでに、購買体験の99%が完了していることが望ましいですね。そうでなければ、長い列に並ぶのと同じことになります。したがって、(店の中ではなく)店の入り口、あるいはそこに至る前にテクノロジーが使われるべきでしょう。

 百貨店のノードストロームのような場所で買い物をする場合、私が最も好きなやり方はこうです。オンラインで複数のサイズを注文し、宅配してもらい、子どもたちに試着させて、合わないサイズを判断してから、返品分を持って店に入る。実際の買い物の前に、これらを体験するのです。テクノロジーによって、そういうことが簡単かつ速やかにできるようになるほど、販売地点でスマートフォンを取り出して操作するよりもはるかに役立ちます。

HBR:アメリカでは、モバイル決済技術の普及がやや遅いようにも思われるのですが、御社は日本にも進出していますね。

 モバイルに関しては、日本のような市場に参入する時には、あらゆる文化的な違いを積極的に理解しなくてはなりません。商売は人の最も基本的な活動ですから、文化の実態を徹底的に探る調査アナリストになる必要があります。日本の文化がこれほど技術に敏感である理由は何でしょうか。

 まず、日本人はデザインを愛する人々です。実は当社が参入した時、ジャック・ドーシーは「わび・さび」に関する本を見せて、スクエアに入社する全員にこれを読ませていると言いました。わび・さびは、デザイン、内的存在、外部世界が融合した、素晴らしいコンセプトです。

 次に、日本は間違いなく流行に敏感な市場です。現れては消える流行を瞬く間に取り入れる彼らの能力には目を見張りますが、その分、物事の移り変わりは非常に速いのです。この点について、私たちは注意する必要があると考えています。スクエアは一時的な流行ではなく、変化の土台となることを望んでいます。当社が日本に参入した大きな要因の1つは、スマートフォンの普及率の高さです。日本のような市場で成功することができれば、それは持続するでしょう。日本文化には、深いロイヤルティの心が根付いているからです。