HBR:現在、モバイルの分野で最も刺激的なトレンドや、人々がウォッチすべきことはありますか。
ビッグデータです。私たちは、データをうまく使えば本来できることの、氷山の一角に触れているにすぎないでしょう。
ビッグデータには二面性があります。一方ではプライバシー侵害への懸念と恐れを生み、情報の秘匿に向かわせます。しかし、自分がより理解され、自分の求めるものに応じて事前に対応がなされれば、私たちの生活におけるさまざまな体験が向上するということも考えるべきでしょう。ビッグデータが人々の選好に沿って、素晴らしい体験をもたらすために使われるのであれば、実に刺激的なことだと思います。
HBR:モバイル・イノベーションの世界を渡っていこうとする人々に向けて、アドバイスを頂けますか。
当社の理念には、「ルールを破れ」というものがあります。CFOにとって、このような言葉は恐ろしくもあるのですが、破るのは法律ではなくルールであり、過去にとらわれるなということです。イノベーティブでありたいなら、「これがいままでのやり方だった」「自分もそれに従って積み重ねていこう」と考えてはなりません。
人にアドバイスをする時に、私がいつも示すもう1つの理念があります。魂を込めること、つまり、自社の顧客のことを忘れないということです。結局のところ、人々は“テクノロジーのためのテクノロジー”にとらわれの身となっていると思うのです。だから顧客の元に足を運び、ともに時間を過ごし、顧客の痛みを感じるべきです。
驚異的なテクノロジーで顧客を驚かせることは可能かもしれませんが、いまだにカプチーノのカップを数えて売上げを計算しているコーヒーショップがあることを知らなければ、意味がありません。顧客の立場で長い時間を過ごしてください。イノベーションを思いついたからといって、顧客のことを忘れてはいけません。
これこそ、偉大なる陰と陽の調和です。変革を起こしながらも、自分の頭の中でつくり出した問題ではなく、現実の問題を解決することに、常に立ち戻るのです。
HBR.ORG原文:Mobile Payments and the 'Wow' Factor: Q&A With Square CFO Sarah Friar June 24, 2013

モリーン・ホック(Maureen Hoch)
ハーバード・ビジネス・レビューのシニアエディター