本誌2013年10月号(9月10日発売)の特集は「顧客を読むマーケティング」。HBR.ORGからの関連記事の第10回は、モバイル決済会社スクエアのCFOへのインタビューをお届けする。2013年5月に日本に上陸した同社は、どんな理念を持ち、何を目指すのか。そこに垣間見えるのは意外にも、日本文化への共感だ。
マーケターは、消費者が「何を買うか」を決める手助けをしようと入念に戦略を練る。しかし「どう支払うか」については、どれだけ時間をかけて検討しているだろうか。モバイル決済会社が狙っているのは、この分野におけるイノベーションだ。とりわけ、こうしたテクノロジーがさほど普及していない市場を取り込もうとしている。
サンフランシスコを本拠にジャック・ドーシー(ツイッターの共同創設者)が率いるスクエアは、この分野におけるリーダー企業を目指す1社である。念のために説明しておくと、スクエアは2つのテクノロジーを提供している。販売事業者向けのカードリーダーと、顧客が支払いに使うモバイル・インターフェースだ。前者は「Squareレジ」、後者は「Squareウォレット」と呼ばれている。ユーザー数は300万人以上にのぼり、年間150億ドル以上の取引を処理する。
本記事では、スクエアのCFOでオペレーション・リーダー も務めるサラ・フライアーに、モバイル決済の展望、マーケターへの示唆、そしてモバイル・イノベーションの世界をどう渡っていくかについて話を聞いた。以下はインタビューを編集したものである(聞き手:HBRシニアエディター、モーリーン・ホック)。
HBR: スクエアの2つの側面についてお尋ねします。御社には、事業主向けと一般消費者向けの2つのサービスがあります。どちらか一方をより重視しているのでしょうか。
非常に強力なネットワークを構築するためには、両サイドともきわめて重要だと考えています。当社はたしかに販売事業者へのサービスから始めました。クレジットカード決済を処理できなかった売り手が、ほかの成熟したビジネスと同じように、オンラインでのカード決済を受け付けられるようになる――その劇的な瞬間をつくりたかったのです。売り手が「ワオ」と感動する瞬間を、当社はつくり出してきたと思います。
もう1つのサービスは、ご指摘の通り消費者向けのSquareウォレットで、立ち上げ当初はやや後回しだったきらいもあります。というのもSquareウォレットに価値を持たせるには、まず販売事業者のネットワークづくりに着手する必要があったからです。このネットワークこそ、売り手と買い手が共生するうえで決定的に重要ポイントです。