HBR:スクエアによって、マーケターは新たな方法で顧客とコミュニケーションを取れるようになりますね。御社から見て、マーケターがこのテクノロジーをうまく使っている例があれば教えてください。
Squareウォレットの活用でよくあるのが、たとえば初回購入時の10%割引のような、ごく基本的なオファーです。パンチカードの活用も目立ちます(注:スクエアには、事業主が独自に電子版のポイントカード〈パンチカード〉を作成できる機能がある)。しかし、これらはロイヤルティを獲得する方法のごく一部で、ほかにもできることが多くあるはずです。
ほとんどの大手事業者は間違いなく、値引きの激しい市場は避けたいはずです。値引きはロイヤルティを獲得する決定的な要因にはならないし、売上げを損なうだけに終わります。ロイヤルティを促進するのは、顧客側の特定のペイン・ポイント(悩みの種)を理解することです。たとえば航空会社の場合、ファーストクラスの顧客にセキュリティーチェックの優先列を設けたり、一番に搭乗させたりすることで、効果をあげています。これらは事実上、無料でできるサービスですが、多大なロイヤルティを引き出します。
つまりは、自分の顧客を知るということです。これこそ私が心からエキサイティングだと感じる部分です。Squareウォレットによって、本当の意味で顧客を理解できるようになります。単に無料の景品を渡すのではなく、顧客にとって重要なものを提供できるようになるのです。
HBR:スクエアは、独自のマーケティングのアプローチをとってきましたね。あまり伝統的なやり方ではないと言う人もいるでしょう。
私たちの究極的な信念は、製品が放っておいてもひとりでに売れるようになるべきだ、ということです。「ワオ! これこそ私の仕事に必要なものだ」と、人々が言う瞬間を求めているのです。
私はスクエアに加わる前、デザインがどれほど重要であるかについて、いまほど敏感ではありませんでした。デザインとは、技術的なコンピテンシー(能力)です。素晴らしいデザインは人々の製品に対する愛着を生み、それは拡散していきます。当社がマーケティングや営業に巨額の費用を投じない理由は、実は明白です。そんなことをすれば、製品そのものに対する目が曇ります。事実上、顧客を説得し操る人員を使って、お粗末な製品の埋め合わせをしていることになるからです。
当社はこのまま、バイラル型で行くべきだと私は考えています。製品がひとりでに売れ、機能を果たし、問題なくきちんと使われる――それが広がれば広がるほど製品を最高のものにするよう、おのずとプレッシャーがかかってくるのです。