顧客データの取得が容易になり、かつ顧客と企業との接点が増えたことで、個別ではなく包括的に生活者を見る必要性が高まっています。このような背景もあり、いまCMO(Chief Marketing Officer)の役割に注目が集まっています。今回は、広告・ブランド戦略業務で25年以上の経験を積み、Visaやチャールズ・シュワブなどの企業でCMOを歴任したベッキー・セイガー氏と博報堂川名周氏との対談を2回にわたってお届けします。


ベッキー・セイガー氏は、広告・ブランド戦略業務で25年以上の経験を積み、Visaやチャールズ・シュワブなどの企業でCMO (Chief Marketing Officer)を歴任したマーケティングストラテジストだ。オグルヴィ・アンド・メイザー在籍時は、アメリカン・エキスプレスの「Do You Know Me?」や「Membership has its Privileges」といったキャンペーンを展開したり、ユニリーバの「サーフ」や「ダヴ」ブランドを統率したりした。10を超えるEFFIE賞(全米年間優秀広告賞)を獲得し、全米広告主協会(ANA)では、2008年から2年間理事長を務めた。同協会のCMO協議会の創立会員でもある。2010年には「Advertising Women of New York」による年間広告女性賞を獲得し、San Francisco Business Times紙ではビジネスで最も影響力のある女性に選出された。現在はE*TRADE社やマーケットシェア社などの顧問を務める一方、次代のマーケター育成教育にも熱心に取り組んでいる。博報堂エンゲージメントプロデュース局の川名周氏が、デジタル時代を迎えて大きな変革が求められているCMOとマーケティングについて聞いた。

時代はCMO1.0からCMO2.0へ

ベッキー・セイガー
(Becky Saeger)
広告・ブランド戦略業務で25年以上の経験を積んだ経営者であり、マーケッターでもある。全米広告主協会(ANA)の前理事長、そして同協会のCMO協議会の創立会員でもある。 2010年にはAdvertising Women of New York による年間広告女性賞を獲得、San Francisco Business Times 紙によってビジネスで最も影響力のある女性に選出された。

川名:ベッキーさんは今、E*TRADE社やTurn社といったテクノロジー最先端企業の顧問に就かれていますが、どのような理由からなのでしょうか?

セイガー:2年前にCMOを退任したときに、マーケティングそのものが劇的に変わってきていると感じました。しかし、マーケターは、次に何が起きるのかといったことに、あまり目を向けていなかったのです。私は最先端の企業でもっとさまざまなことを知り、そして私自身のCMOの経験を使ってそうした企業の助けになりたいと思いました。できるだけオープンマインドに、この後何ができるかということを見るようにしています。

川名:米P&Gのグローバル・マーケティング責任者だったことで知られるジム・ステンゲルさんは“新CMO”は、科学的なことと芸術的なことがミックスした人だとおっしゃっていました。ベッキーさんはCMO時代、芸術派と科学派どちらでしたか?

セイガー:私はどちらかというと芸術派でした。マーケティングの分析面はファイナンスの人たちと一緒に仕事をすることで補われ、しかもそのことで、さらに芸術面を理解できるようになりました。自分自身、バランスは取れているほうだと思いますが、素晴らしいアイデアが実現されるのを見るのは大好きですね。