不信と錯綜:報酬体系に反映する前に、そもそも信頼性が高く安定した指標がなければ、大惨事を覚悟した方がよいだろう。以下の2つの問題に直面する可能性が高い。

・不安定な評点:サンプル抽出による問題、顧客ミックスの変化、回答率の違い、そして不十分な回答数は、信頼性が低い、もしくはブレの大きな評点につながる。それは、評点が報酬体系に結びついている従業員を激怒させることだろう。

・評点と行動の関連性への理解不足:顧客フィードバックを定量化する場合、従業員やマネージャーがそれを正しい方向に動かす方法を知らないこともある。あなたのチームが、評点結果に対して影響を及ぼし、改善することが可能であるという感覚が得られるまで、新たな評点に基づく報酬体系は不公平、もしくは恣意的なものとなりかねない。それは、顧客満足向上への注力ではなく、怒り、責任のなすり合い、保身へとつながってしまうだろう。

 エンタープライズ・レンタカーは、ESQi導入の初期の段階でこれらの多くの問題を経験した。CEO の アンディー・テイラーは、低い評点結果が出た店舗が「測定結果、調査票、そしてサンプリング技術を攻撃した」と振り返る。しかし同社は徐々にその手法を改良し、駆け引きを防ぐ方法を学び、ESQi評点と事業パフォーマンスの関連性に対する従業員の理解を高めるべく支援した。その結果、同社の従業員は今や、ESQiを公平で信頼性の高いパフォーマンス指標として信頼している。

 究極的には、ほとんどの企業は顧客フィードバックを賞与・報酬体系に反映させるべきである。経営陣から顧客と対面する従業員まで、顧客ロイヤルティ向上に注力させることができるからだ。顧客ロイヤルティの向上を重視した賞与・報酬体系は、企業の価値観を組織全体に伝達するよい方法でもある。しかしながら、実行に移す前に5つの条件を満たす必要がある。その5つの条件については、次回の記事で紹介したい。


HBR.org原文:The Dangers of Linking Pay to Customer Feedback September 8, 2011

*本連載は、ロブ・マーキーがフレッド・ライクヘルドと共著した『ネット・プロモーター経営 』の中身をハイライトしたものです。
*第4回は11月8日公開予定。

 

ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)
1973年に創設。世界32ヶ国に50拠点のネットワーク、約5700名を擁する世界有数の戦略コンサルティングファーム。クライアントとの共同プロジェクトを通じた結果主義へのこだわりをコンサルティングの信条としており、結果主義の実現のために、高度なプロフェッショナリズムを追求するのみならず、きわめて緊密なグローバル・チームワーク・カルチャーを特徴としている。