顧客からのフィードバックを賞与や報酬に連動させようとすると、駆け引きや抜け駆けをしようとする者が出てくる。そもそも、その評価方法が公平で信頼に足るものかどうかは、従業員が最もナーバスになるところだ。拙速に実行に移す前に、満たすべき5つの前提条件がある。ベイン・アンド・カンパニーの好評連載、第4回。
顧客に関する指標を賞与・報酬に反映させる企業が増えてきている。大手金融機関のTIAA-CREFは、上級管理職の報酬に顧客ロイヤルティ評点の改善を反映させている。イギリスの携帯電話販売店フォンズフォーユー(Phones4U)は、現場スタッフの給与査定時に考慮するネット・プロモーター・スコア(NPS)の比重を大幅に上昇させることを発表した 。自動車部品チェーンのペップボーイズ(Pep Boys)は、株主総会の案内状に顧客関連指標を管理職の報酬体系において非常に重要な位置づけとすることを記載し、報告した。また、エンタープライズ・レンタカーはエンタープライズ・サービス・クオリティ指標(ESQi)における顧客からのフィードバックの評点を昇進に反映させている。
顧客からのフィードバックを賞与・報酬に反映させることの見返りは大きい。ただし、私が以前記事で紹介した落とし穴とリスクを避けるため、実行に移す前に次の5つの前提条件を満たしておく必要がある。
1.真に信頼性が高いフィードバックと指標
もしもその時々で評点のバラつきが大きく、その理由が判らない場合は、信頼性のある測定とフィードバックのシステムが整備されていないことになる。指標の信頼性が低ければ、報酬体系の信頼性にも疑いがあるということになる。評点の信頼性を測るために、次の問いに答えてみて欲しい。
●サンプルの精度はテスト済みで安定しているか? サンプルのバラつきは評点とフィードバックが大きくぶれる原因となる。安定性がないままでは、賞与支給時におかしな事態を招くことになるだろう。
●データは統計的なバラつきを軽減するのに十分な数か? 大手企業のほとんどの場合、1事業部門において1期あたりおよそ200強の回答を得ることが必要である。この数字の背景には数学的な根拠がある。この規模のサンプルがあれば、評点のバラつきはランダムなものではなく、真の違いを反映するという信頼性を帯びるようになる。最近、たった11の回答数の評点を基に賞与・報酬を決めている企業に遭遇した。そのようなことは決してしてはならない!
●回答率は、回答者バイアスを軽減できるような高水準にあるか? 調査票に回答する顧客は、回答しない顧客と比べて意味ある違いを有すると考えられる。回答率を100%に近づけられる程、このバイアスによる影響を排除することが可能だ。ベインの調査では、ロイヤルティ・リーダー企業であれば法人顧客で60%以上、個人顧客においては30%以上の回答率を達成できるとしている。