4.組織的な学習
学習し改善していくためには、根本的な原因をツール、プロセス、リーダーシップによる支援によって補完する必要がある。
ダイレクト・マーケティングに携わるある社員は、このことを苦労しながら学んだ。その企業はしっかりとした「顧客の声」プログラムを有していた。フィードバック評点の改善を四半期で測定し、チームがデータに直接アクセスし、分析し、フィードバックの内容を理解するために電話の内容を聞くこともできた。にもかかわらず、ほとんど進歩が見られなかった。何人かのマネジャーは、そのシステムを止めることを提案した。他の者はただそれを無視し、その月の一時的な出来事が過ぎ去ることを待っていた。
しかしながら、数十ものチームのうち、3つのチームでは第一四半期中に進歩が見られた――そしてその改善は翌四半期以降も続いた。彼らは何が違っていたのだろうか? そのチームの上司は、他のチームよりもおよそ30%多くの時間を使って対面で話を聞き、コーチングを実施した。そのうち2チームは、毎週グループになってフィードバックを考察し、パフォーマンスを改善するためのヒントを共有した。2チームは、従業員同士が互いに観察し助け合う同僚コーチングを導入した。同社がこのような入念な学習とコーチングの慣習をすべてのチームに適用すると、劇的な進歩が見られるようになった。
5.繰り返しのコミュニケーション
なぜ多くのリーダーシップチームは、賞与・報酬体系の詳細を考案するのに何時間もかけ、その意図を充分に伝達しないのだろうか?
ほとんどの場合、企業による価値伝達の効力の半減期は非常に短く、せいぜい3カ月にも満たない程度だろう。褒賞の理由を社員に定期的に伝えなければ、彼らは抜け道を上手く利用し、その意図を過って解釈し、達成目標の背景にある精神ではなくメカニズムの方に注力してしまうことになるだろう。
これらの5つの前提条件は、信頼を確立するために重要である。残念ながら、このような素晴らしい土台があっても、私が前回の記事で指摘したような「駆け引き」を防ぐ努力は必要である。顧客に好評点をつけることを懇願する、サンプルを操作する、その他の抜け道等の動きだ。したがって、信頼することは重要であるが、検証もすべきだ。エンタープライズのような会社は、評点をいかなる方法によって操作することも禁止されている。違反行為は稀であるが、それが起きた時にはしかるべき厳しい処置が迅速に取られる。
これらの前提条件を満たすことは成功を保障するものではない。あなたの企業にとって何がうまく機能するのかを実験し発見することが重要だ。ただし、これらの前提条件を満たさない限り、賞与・報酬体系における持続的成功は期待できないだろう。
HBR.org原文:Before you link pay to customer feedback: five essentials September 22, 2011
*本連載は、ロブ・マーキーがフレッド・ライクヘルドと共著した『ネット・プロモーター経営』の中身をハイライトしたものです。
*第5回は11月15日公開予定。
1973年に創設。世界32ヶ国に50拠点のネットワーク、約5700名を擁する世界有数の戦略コンサルティングファーム。クライアントとの共同プロジェクトを通じた結果主義へのこだわりをコンサルティングの信条としており、結果主義の実現のために、高度なプロフェッショナリズムを追求するのみならず、きわめて緊密なグローバル・チームワーク・カルチャーを特徴としている。