既存企業が社会的にも影響力を持ち、新しい企業が生まれにくい日本。経済の仕組みを変えていくとともに、いま必要なのはアントレプレナーシップを持ち、起業にチャレンジしようという人材の総数を増やすことだ。ライブドア社長時代から、時代の寵児として注目を集めた堀江貴文氏。同社をめぐる証券取引法違反容疑で起訴され実刑判決を受けて収監されたが、2013年3月の仮釈放後も、宇宙ロケット・ビジネスをはじめ、多くの新規事業を生み出すべく精力的に活動している。学生時代から一貫して起業の道を歩み続ける堀江氏。なぜいとも簡単に起業ができるのか、失敗のリスクをどのように考えているのか。そして、次々と起業をしようとする原動力は何か。堀江氏は、いまや起業するリスクより起業しないリスクのほうが大きいと言う。稀代のアントレプレナーに、今日の環境で起業家としての生き方・考え方を聞いた。
将来を考えることに意味がない
考えないから不安にならない
編集部(以下色文字):堀江さんの行動を拝見していると、起業することが簡単そうに見えてしまいます。しかしごく普通の人の多くは、起業することに対して見上げるような高いハードルがあると考えがちです。
堀江(以下略):そうおっしゃる方が非常に多いのですが、おそらくハードルは高くないと思いますよ。最大の理由は、失敗を怖れることでしょう。しかし、失敗して悪いことがあるのでしょうか。起業に失敗すると多額の借金を背負うというイメージが広まっているようですが、いまは起業するのにそれほどのお金はかかりません。

堀江貴文(Takafumi Horie)
SNS株式会社オーナー兼従業員。元ライブドア代表取締役社長CEO。1972年生まれ。福岡県出身。東京大学中退。96年オン・ザ・エッヂ設立。2002年旧ライブドアから営業権を取得し、社名変更。2006年ライブドアをめぐる証券取引法違反容疑で逮捕、起訴。2011年懲役2年6カ月の実刑判決が確定、収監。2013年3月仮釈放。ライブドア時代からテレビ、書籍、メルマガなど幅広いメディアで活躍するかたわら、宇宙ロケット・ビジネスにも参入。
PHOTOGRPHY:Kentaro Kumon
たとえばECサイトを利用して、おいしい手づくりジャムを売るケースを考えてみましょうか。この場合、PCは自分のものを使えば新たな投資は発生しませんし、ECサイトは〈BASE〉を使えば無料です。決済手数料にしても、カード会社に支払うわずかな手数料だけで済んでしまいます。ウェブも普通のブログ・サービスでまったく問題ありません。起業する時に、多額の借金をする必要などまったくないのです。
僕も今度、30人ほどのキュレーターが本当においしい店だけを紹介するグルメ・サイトを立ち上げます。これも一種の起業だと思いますが、かかったお金はウェブ制作会社に支払う約60万円と、レンタル・サーバー代ぐらいだと思います。60万円は「多額の借金」という金額でしょうか。
たしかに僕らが起業した頃はそうした意味でのリスクはありました。いまならADSL回線並みの1.5メガバイトの光ファイバーを引くだけで月間38万円もかかりましたからね。ここまでコストが下がってくると、僕はむしろ起業しないリスクのほうが大きいと思いますね。