堀江さんの若い頃はまだハードルが高かったわけですよね。でも、企業に就職する人が圧倒的だったなか、堀江さんは軽々と起業されました。

 よく老後が不安だと嘆く人がいますが、10年後、50年後のことを考えて何かよいことがありますか。僕は将来を考えることに意味はないと思っていますし、そんな先のことを考える時間もありません。考えないから不安にもならない。後先考えずにいまやりたいことを一生懸命やる。その連続でいまここに立っています。1996年にオン・ザ・エッヂを起業した時も、一大決心をして立ち上げたわけではありませんよ。

 僕のことを「決断が早い」と言ってくださる方もいるようですが、決断を躊躇して何もよいことがないというだけの話です。決断が遅いのは、誤った決断をしたらどうしようと不安に思う心理から来ているのでしょうが、決断が失敗だったらすぐに修正すればいいのです。

 これは〈SPモードメール〉と〈LINE〉の違いに例えるとわかりやすいかもしれません。〈SPモードメール〉では、メールを送信する時に確認画面が出てきます。一方の〈LINE〉は、送信を押したらすぐにメールが送られてしまいます。間違えたと思っても後から訂正することしかできません。にもかかわらず、人々に支持されているのは圧倒的に〈LINE〉です。その理由は何でしょうか。おそらく簡易性です。間違えて送ったと気づいたらすぐに訂正すればいい、後で取り消せばいいと考える人が圧倒的になっているのです。

 起業もまったく同じです。やりたいと思ったことを決断し、すぐに実行する。ダメだったらすぐにやめる。その繰り返しです。考えて考えた挙げ句躊躇することに意味はありません。起業はだれにでもできます。躊躇する人を見ていると、自転車に乗れないんだなと気の毒に思ってしまいますね。

実際にやってみないとわからない
無理だとわかればプランBを考えればいい

 いまを生きることの反問として、計画を立てるという考え方があります。アントレプレナーシップにおいて、いまを生きるという発想と計画性は両立するものでしょうか。

 そもそも、何のために計画を立てるのかがわかりません。計画を立てたからといってその通りに事が進むわけではありません。むしろ計画通りに進まないことのほうが多いものです。計画は一定の目安・目標だと言う人もいますが、僕には自己満足にしか見えません。計画を立てて安心し、計画通りに進まないことにいらだつ。自分のなかで勝手に踊っているだけに見えます。

 もちろん、何か新しいビジネスを実現するには、いくつかの必要な要素が存在します。それぞれの要素をいつまでに実現しなければならないかというのは、実際にやってみなければわかりません。できないことはできない、できることはできる。それは事前にわかるものではないのです。