僕がいま進めているロケット開発にしても、計算すればどれぐらいの出力が必要かわかります。その出力を出すための性能、燃料の種類、燃焼方式、ロケット本体の重量などの要素も、紙の上では正確にわかります。僕たちがやっているのは、それを実現するための開発を進めるだけです。それぞれの要素には、開発に時間がかかるものもあればすぐにできるものもあります。場合によっては開発が困難なものも出てきます。無理だとわかれば、その段階でプランBを考えればいい。スタートした時点で、できるかできないかなどというのはわからないからです。
やるべきことの優先順位を設定することはありませんか。
僕が言っているのはやるべきことを挙げて、できることをやるという発想です。最終的にすべての要素がそろわない限りそのプロジェクトは実現できないのですから、優先順位を設定することにも意味はないと考えています。時間のかかることから先に手をつけるのがビジネスの常道かもしれないですが、僕はそう思いません。そもそも何に時間がかかるか、何がボトルネックになるかというのは、やってみなければわからないからです。
堀江さんの起業に対するスピード感は尋常ではありません。アントレプレナーシップの要素として、スピード感は重要になるでしょうか。
僕はただ、自分がやりたいと思ったことをやっているだけです。それでもたしかにスピード感は重視しますね。あらゆるビジネスは、いつかだれかがやるものだと考えるからです。とはいえ、いつまでたっても実現されていない。それをスピード感をもって実現するのが、僕の役割だと思っています。
いつかだれかが実現することが
いまだ実現されていないので、僕がやるだけ
起業家のなかには、人生に対する有限感が出発点になっていると言う人がいます。堀江さんも同じような感覚をお持ちなのでしょうか。

僕は基本的に死にたくありません。自分が死ぬことをイメージするのは、非常に不愉快なことだと思いますね。よくそんな不愉快なことから話が始まるなと、不思議で仕方がありません。
僕のスピード感は、やりたいことがたくさんあるからです。逆説的かもしれませんが、死ぬことを考えたら何でもやりたい。がんばってやるしかないとファイトが湧いてきます。
宇宙ビジネスもそうです。僕らが子どもの頃、だれもが自由に宇宙に行く様子を描いたアニメや映画がありました。しかも、人類が月面に降り立ったのは1969年ですから、もう44年も前のことです。僕としては、大人になる頃には火星あたりには行けると思っていたのに、まだだれも行っていません。
だれかがいつか実現するだろうと思っていたことが、いまだに実現されていないので僕がやっているだけのことです。
死を意識したくないと言いましたが、やはり元気なうちに宇宙を見たいじゃないですか。このままだと元気なうちに行けないというのが、スピード感の一因ではありますね。