いつまでたっても実現しないことを実現するのが堀江さんの役割だということですが、それ以外に起業に向かう動機はありますか。たとえば人に認められたいという承認欲求も動機の一つとして考えられると思いますが、堀江さんからあまり感じられません。
やっぱり感じられませんか。僕は昔から人にほめられたことがありません。小さい頃からほめられて育ってきたのではなく、むしろけなされながら育ったタイプなので、人に認められることがなかったのです。承認欲求と言われても、ピンとこないですね。

もともと、僕は飽きっぽいところがありました。自分のいる場所が、同じレベルのぬるま湯のように感じられると飽きてしまうのです。もっとレベルの高いところでやってみたい、もっと高みを目指したい。すぐにそう考えてしまうのです。
そうなると、自分より高いレベルにある人に囲まれている状態が続きます。「なんだよ堀江、お前はこれくらいのことしかできないのかよ」と言われる世界にいつも身を置いてきたので、人からほめられることがほとんどなかったのです。
そのほうが、僕はかえって燃えてくるのです。そこで上にいるヤツを追い抜こうと一生懸命やっていると、いつの間にか自分のレベルが上がっていきます。ふと気づくと、その集団のなかでいちばん上にいる。いちばん上に来たところで飽きてしまう。そこから出て、さらに上のレベルにある場所に行って腕試しをする。その繰り返しです。
この性格は、ビジネスの世界に入ってもまったく変わりません。ビジネスとは関係のない世界、たとえばゴルフでも同じです。
すべての分野で負けず嫌いですね。負けず嫌いだと自分で工夫しますし、周囲に負けないようにがんばってやることが苦になりません。その結果として、見える世界がどんどん変わっていきましたね。
アイデアは何もないところから生まれるのではなく、
フュージョン(融合)から生まれる
最後に、堀江さんがアントレプレナーシップに大切だと考える資質についてお聞きしたいのですが。
断っておきますが、起業はだれにでもできることだと考えています。ですから、起業に必要な資質というものがあるとは思っていません。
その前提に立って僕のことをお話しすると、常に意識しているのは「マッシュアップ」というスタンスです。マッシュアップとは、まったく何もないゼロの状態から新しいものを生み出すのではなく、すでに存在するものを組み合わせることで新しいものを創造するというのが本来の意味です。