新興国市場で成功しなければ
企業の成長はない

 どこかの先進国の消費者が、日本には大手輸出企業があふれていると考えたとしたら、それは正しい。日立、パナソニック、ソニー、トヨタなど、日本の多くの多国籍企業が20世紀後半に名前を知られるようになった。だが、新興国市場の消費者は、日本企業のことを同じようには考えないだろう。むしろ、そうした大手企業がつくった製品を一度も使ったことがないかもしれない。

 大部分の日本企業は、先進国では底辺から参入したが、途上国へはトップ層の消費者を足がかりに参入することを選んだ。その後、規模の経済や範囲の経済──そして利益──が見込めるミドル・レンジおよびローエンド・セグメントへの進出を図るも苦戦している。結果的に、これらの日本企業は世界一成長の速い市場でしくじるおそれがある。

 そうなれば企業の存在そのものが脅威にさらされる。先進国は成長スピードが鈍化している。ゴールドマン・サックスの予測では、2011年から2020年にかけて、先進国市場は年平均2%で成長するが、ブラジル、ロシア、インド、中国などの新興国は年平均7%近い成長が見込まれる。