グローバルとローカル
2つの戦略を結びつける

 多国籍企業は、新興国市場での事業と本社とを切り離して考えがちである。中国で製造したり、顧客サービス拠点をインドに置いたりしてコストを削減するチャンスがあれば、もちろん彼らは歓迎する。そのうえ、そうした市場の顧客にも販売して利益が上がれば言うことはない。

 しかしどれほど世界各国に地歩を築こうと、アメリカ、ヨーロッパ、日本の企業は本質的にはあくまでアメリカ、ヨーロッパ、日本の企業である。本国の幹部たちは往々にして「我々」と「彼ら」という考え方をし、アイデアや指示が一方的に流れることを期待する。つまり、本国の我々から新興国市場の彼らへという一方通行の流れである。ある国で特別なプロジェクトを展開する場合は、あくまでその国限定というスタンスを維持することが求められる。

 各社はこうしてコストやリスクを最小限に抑えているのだが、これは自社ブランドの名声に自信があり、新興国の消費者に十分アピールできると信じているからこそ取れるアプローチである。多国籍企業は、たとえ世界各国の市場に進出していても、「世界市場の企業」とは呼べないことが多い。それゆえ、自社製品の魅力をより幅広く世界に広めることができないでいる。