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BOPビジネスの行き詰まり
40億人に上る世界の貧困層を相手に事業展開を図る企業のほとんどは、BOP(bottom of pyramid)[注]ビジネスの専門家が長きにわたり喧伝してきたお決まりの方法を採用している。それは、価格と利益率をきわめて低く抑えた製品を提供し、それを大量に売ることでまずまずの利益を上げることを目指す、というものだ。この「薄利多売」モデルは、インドの低所得消費者に洗剤〈ホイール〉を販売したヒンドゥスタン・ユニリーバ・リミテッドの成功が大きなきっかけとなって、10年以上もの間、幅を利かせてきた。
しかし、最近の多くの事例が示すように、このモデルには致命的な欠陥がある。対象市場において普及率を非現実的なまでに上げない限り、成立しないのだ。地域の全消費者の30%を超える普及率を必要とすることも多い。
低所得市場で善意ある事業が持続可能な利益を上げられなかった例は、枚挙に暇がない。たとえばプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の浄水剤〈ピュア〉は、4つの市場でテストし、5~10%という健全な普及率を達成したにもかかわらず、2001年の本格発売後は競争力を確保するだけの利益を生み出せなかった。価格は1袋10米セント相当で、利益率は世界中で販売する同社製品と同じく約50%だったが、P&Gは2005年に〈ピュア〉事業で利益を上げることを断念し、人道団体にのみ原価で販売すると発表した。