アラブ市場への障壁となる
アラブ文化とイスラム教

 あまり目立たないが北欧最大の乳製品メーカーのアーラ・フーズは、2005年にはアラブ世界の主要企業になっていた。このデンマークとスウェーデンの合弁会社は〈ルアーパック〉、〈パック〉、社名を冠した〈アーラ〉というブランドで、中東のバター、チーズ、クリームの市場を席巻していた。2005年の同地域での売上高は5億5000万ドルと、最高額に達した。

 そこに登場したのが例の風刺画である。デンマークの『ユランズ・ポステン』紙は、2005年9月30日の紙面に「ムハンマドの顔」と題した記事とともに、このイスラムの預言者を風刺した戯画10数点を掲載。世界中のイスラム教徒は激怒し、2006年1月には、サウジアラビアの聖職者がデンマーク製品の不買運動を呼びかけた。

 数日のうちに、アラブ世界のほとんどの小売業者はアーラ・フーズ製品を店頭から引き揚げた。同社はこの風刺画から距離を置くために大掛かりなPRキャンペーンを行い、この地域で40年にもわたって事業を行ってきたことを訴えた。聖職者たちは4月に不買命令を取り下げたが、同社の2006年の売上高は不買運動前のわずか半分の水準に終わった。