カーシェアリングを行うには日本が最適な環境である
――カーシェアリング事業における御社の最大の強みはなんでしょうか。
やはり場所を持っていることですね。特に都心部では車よりも土地にかかるコストの方が圧倒的に大きいです。たとえば100万円の車をリースしたら月2万円程度ですが、駐車場は月4~5万円にはなりますよね。当社はタイムズ駐車場のスペースを利用しているため、そのコストは駐車場事業で負担していることになります。だからこそコストを低く抑えることができ、利益が出せるのです。駐車場コストも入れたら利益を出すのは難しいでしょうし、そうでなければ参入もしなかったと思います。
たとえば先ほど挙げたジップカーは、昨年レンタカー会社のエイビスに買収されましたが、創業から買収までの間、一度も通期で黒字にはなっていません。ジップカーは、マンハッタン島では1ブロックに1カ所は必ずあるほどにメジャーですが、土地を借りているため黒字化が難しいのです。それだけ土地を持ったプレーヤーが有利なビジネスなのです。
駐車場ビジネスをやっていて痛切に思うのが、先行メリットの大きさです。他社に先駆けて規模を大きくすることが、後々すごく大きくなって返ってくるのです。ですから、早期に営業黒字が達成できるかどうかより、一定の規模にさせることを目指しています。そのため、拡大のスピードを緩めるつもりはありません。
――駐車場の看板を目にする機会が多いというのは、最大のマーケティングですね。
カーシェアリングは車を、駐車場は土地をシェアするビジネスとして、同じシェアリング・ビジネスと言えますが、マーケティングは正反対です。駐車場のマーケティングはその周辺にいない方々が対象であり、カーシェアリングのマーケティングはその周辺にいる方々が対象です。そういう意味ではカーシェアリングは顧客層が捉えやすいとも感じています。
――駐車場としては充分認知されていると思いますが、カーシェアリング事業の認知はどのように高めているのでしょうか。
おかげさまで、現在では当社の黄色い看板を見て駐車場と認知していただけるようになってきましたが、カーシェアリング事業についてはまだまだだと思っています。駐車場事業を始めた時よりは、少し早いペースで認知されてきていると感じていますが、駐車場と同じくらいの認知度になるには、あと5年くらいはかかると思います。
――カーシェアリングは日本に定着するでしょうか。
カーシェアリングが一番マッチするのは日本だと思っています。よく、海外展開はどういうエリアが良いか聞かれるのですが、屋外に自動販売機がある国は治安もモラルも高いと言えるのではないでしょうか。東日本大震災が発生した時、海外の報道では日本人の規律を守る姿が称賛を浴びていました。それに象徴されるように日本人はとにかく真面目ですし、お互いに配慮しあう意識が高いと思います。日本は公衆トイレがきれいな方だと思いますが、やはりほかの人も使うという意識があるからでしょう。カーシェアリングは、利用者に次に使う人のことを考えていただく必要がありますので、そういった意味では日本が最も根付きやすい文化を持っていると思います。
――利用者同士が互いを配慮する構図は、ほかのビジネスには見られませんね。通常の事業にはないリスクを負っているという印象があります。
無人駐車場事業をやってきての慣れでしょうか。事業リスクとは思っていません。たとえば当初はケージに入れていただければペット同乗可だったのですが、残念ながら、ケージに入れずに載せる方がいらっしゃいました。シートに毛がついて衣服が汚れたり、アレルギーをお持ちの方がいらっしゃったりするので、クレームが発生しました。会員に対して再三の警告を行いましたが、そうしたクレームが減らなかったため、やむなくペット同乗を禁止にしました。灯油の運搬も同様、クレームがあって灯油積載禁止にした経緯があります。
しかし、最初からなんでもかんでも禁止する、他社で禁止しているからうちでも禁止という安易なことはしたくありません。使う前から決めつけられるのって嫌じゃないですか。ですから禁止はしない代わりに、ルールを守ってご利用いただくように啓蒙する必要があります。(後編に続く)