困難に直面すると、自分の限界をすぐに見切り諦めてしまう――実はこれは、子どもの頃に優等生だった人に顕著な傾向であるという。自分の能力や資質を大人からどうほめられたか。それが自己認識の形成に影響する、という報告をお届けする。


 自分のポテンシャルを完全に発揮するのは容易ではない。それを阻む障害はそれこそ山のようにある。あなたの提案を評価してくれない上司や、多大な時間を取られる退屈なプロジェクト、不景気による就職難、仕事と家庭と自分自身の目標を両立させる難しさ、等々――。

 しかし、自分が乗り越えなければならない最も困難なハードルのひとつは自身の内面に潜んでいることは、賢くて才能に恵まれた人でもあまり気づいていない。

 平均以上の資質を備えた人々――特別に賢い、創造的、洞察力に富むなど、さまざまな点で優れていると見なされる人々――は往々にして、他者が見るようには自分の能力を評価しない(特に西洋文化においては)。自分をより厳しく評価しているだけでなく、自身の能力を見る目が根本的に他者と違っているのだ。これは、才能ある子どもが成長すると傷つきやすく自信のない大人になってしまう、ということに関係している。周囲よりもずっと自信に満ちていてしかるべきなのに、そうはならない。この悲劇を正すには、まずそうなってしまう理由を理解しなくてはならない。そのためには、過去にさかのぼってみる必要がある。

 現在あなたが仕事で成功しているなら、小学5年生の頃もすでに優秀だった可能性が高いだろう。いくつかの(もしかしたらすべての)科目でよい成績を収め、教師や両親からたびたびほめられていたのではないだろうか。

 私がコロンビア大学の大学院生だった時、指導教官のキャロル・ドゥエックと彼女の教え子のクローディア・ミューラーが、小学5年生を対象にさまざまなほめ方の効果を調べる研究を行った。最初に比較的易しい問題をいくつか生徒全員に出題し、その結果をほめ称えた。生徒の半分に対しては、能力が優れていることに焦点を当ててほめた(「よくやったね。本当に頭がいいんだね!」)。残り半分の生徒については、頑張って努力したことに焦点を当てた(「よくやったね。本当に頑張ったんだね!」)。