私たちは生涯を通じて、多くの場合無意識に、こうした思い込みを持ち続ける。優秀な子どもは自分の能力を生得的で変えることができないと思い込み、大人になると自分の能力を厳しく評価しすぎてしまう。何かの分野で、成功するために必要なものが自分にはないと決めつけて、すぐに諦めてしまう。

 たとえば、組織のトップに上り詰めようとする時に直面する外的な阻害要因――機会の不平等、公正を欠く固定観念、仕事と家庭を両立させる困難など――がすべてなくなったとしよう。それでも、自分の能力について誤った認識を持っていると、対処すべきことは残る。最大の敵は自分自身であるという事実だ。

あなたは、容易に達成できるとわかっている目標だけを設定し、チャレンジを避け、無難な道を選ぶことがどれほどあっただろうか? ずっと以前に、これは絶対に上手くなれないと決めつけてしまった事柄はなかっただろうか? 習得するのは絶対不可能だと決めつけた技能は? 当てはまることが多くあるなら、おそらくあなたは「優等生」の1人だったのだろう。そして、「いまの自分のまま変わることなどできない」という観念によって、あなたが考える以上に人生を大きく左右されてきたのかもしれない。それもいたしかたないだろう――もし本当に、能力が生来のもので変えられないのであれば。しかし、けっしてそうではない

 知性、創造性、自制力、魅力、運動能力――どんな能力であれ、それは大きく変えうることが複数の研究で明らかになっている。新たな技能をマスターする時に決め手となるのは、経験や努力、粘り強さである。もしあなたが利口な子どもだったのなら、そろそろ能力に関する(間違った)認識を捨て去ってもよい頃だ。自分はいつでも向上できるという事実を受け入れ、遠い昔になくしてしまった、新たな挑戦への自信をぜひとも甦らせよう。


HBR.ORG原文:The Trouble With Bright Kids November 21, 2011

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