マッキンゼーの元採用マネジャーで『採用基準』の著者、伊賀泰代氏とボストンコンサルティンググループ(BCG)出身でライフネット生命副社長の岩瀬大輔氏の対談が実現した。就職超難関業界のコンサルティングファームではどのような経験ができるのか。話しは、この業界を目指す人へのアドバイスへと進む。

コンサルティング・ファームなんて知らなかった

岩瀬大輔(以下、岩瀬) 大学生のとき、僕は司法試験の勉強をしていたので就職活動をしていませんでした。当時DMがいろいろ来ていたのですが、自分は弁護士になろうと思っていたので、封を開けずに全部捨てていました。ところが、たまたま1社だけ開けた。それがボストン・コンサルティング・グループ(BCG)からのものだったんです。

伊賀泰代(以下、伊賀) なぜBCGからのDMだけ開けたんですか。

岩瀬 他社は宛先が印字されていたのですが、BCGだけは宛名が手書きだったから。ただそれだけです。開けてみたら堀紘一さんのお顔がドーンと出ていて、「きみたちには、日本の会社では考えられない責任と報酬を約束する」というインパクトのある言葉が書かれていました。

岩瀬 大輔
(いわせ だいすけ)
ライフネット生命保険代表取締役副社長。1976年生まれ。98年、東京大学法学部を卒業後、ボストン・コンサルティング・グループ、リップルウッド・ジャパンを経て、ハーバード経営大学院に留学。同校を上位5%の成績で卒業(ベイカー・スカラー)。2006年、ライフネット生命保険の設立に参画。2009年2月より現職。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2010」選出。

 同封されていた試験問題のテーマも印象的でした。確か「10年後に流行しそうなものは何か。その理由とともに書け」だったと思います。ただ、僕はコンサルティング・ファームという存在を知りませんでした。そもそも就職活動をしていなかったので、何も準備もせずフラッと行ったんです。面接では「作文で書いたことをエレベーターで一緒になった僕に説明するつもりで1分で説明して」とか「中学校の修学旅行の市場規模はいくらか、推計せよ」といった、今から考えると「いかにもコンサル」という問題が出されました。最初は「は?」という感じでしたが、その場で考えて議論をしていくと答えを出すことができました。それから2週間のインターンに呼ばれ、終わった次の日には正式なオファーが出ていました。

 当時のBCGの先輩たちも同じような感じで、よく分からないまま私服で面接に行ってしまうような人たちの集団でした。伊賀さんの本を読みながら、今はコンサルティング・ファームに入ることが一種の流行になっていて、ファッションのようになっていることを知り、違和感を覚えました。

伊賀 ファッションという面もあるかもしれませんが、私が就職した頃の日本興業銀行のように、日本を変えるにはこういう業界に入らなければならないというプロトタイプになっているのかもしれませんね。

 コンサルティング・ファームに限ったことではありませんが、今でも入社する人でケース面接の準備を一所懸命にした人なんて、ほとんどいないはずです。面接なんて必死に練習して臨むものではなく、面接者の目の前で、ケース面接が何なのかも知らないまま、それでも出された課題を一所懸命考えるから、この人は考えるのが好きな人だ、こんな考え方をする人だということがわかって採用されるわけですから。