2.データが誰にとって、なぜ、どの程度の価値を持つのかを理解する

これは言うは易く、行うは難しである。私はこの1年間で、データのエンドユーザー100名以上と話をした(その業界は、金融サービス、医療、テクノロジー、非営利団体まで含まれる)。そのなかで気づいたのは、データ販売のターゲットとなる顧客は従来の顧客層とは異なるかもしれない、ということだ。たとえば、富裕者の資産管理を行う人が、クライアントの節税対策の一環として寄付するチャリティを選ぶ際に、製品評価を行う非営利団体は非常に役立つかもしれない。あるいは、新薬に対する医師の評価を示す医療データは、医薬品メーカーのブランドマネジャーだけでなく、有望な投資機会を探している資産管理会社のポートフォリオマネジャーにとっても有用かもしれない。顧客を見つけるには以下の方法がある。

●潜在的なユーザーを幅広く捉えて、ターゲットとなる顧客を特定する。そして顧客インタビューを行い、彼らの「果たすべきタスク」(ハーバード・ビジネススクール教授のクレイトン・クリステンセンが言う"jobs to be done")を見定める。顧客の現在のデータにはどんな穴や不足があるのかを探り、自社のデータがその穴を埋められるかを判断する。その場合、必要なのは生のデータなのか、それとも加工された、より分析的なデータなのかを考える。

●データをさまざまな形で示し、ユーザーの知識を探る。データ活用に関するユーザーの知識レベルは、さまざまである。生のデータを見て価値を即座に見抜ける人がいる一方で、そのデータが生む価値を視覚的に示してほしいと思う人もいる。あるクライアントはこう話した。「まさに、素晴らしい果物や野菜でいっぱいの、農産物直売所にいるようなものです。こしらえたいと思うレシピを何百も思いつきます」。彼には明らかに、生のデータの潜在価値が見えていた。反対に、シェフになりたいとは思わず(またはなれずに)、レストランの客になりたいという人もいる。メニューが示され、そこから選ぶほうがよいというわけだ。両者ともに生の素材の消費者となるわけで、どちらにもサービスを提供する意義はある。

●潜在顧客に直感でデータセットをランク付けしてもらう。優先順位の「高」「中」「低」を、それぞれ緑、オレンジ、黄色で示してもらう。ユーザーの最初の反応は一般にかなり現実的で、価値や有用性、支払い意欲に関する総合的な判断が表れる。顧客インタビューが進むにつれ、色分けされたマトリクスは有意義なものとなり、機会が最も存在する部分が見えてくる。