世界最強の靴修理店舗をつくる

――社長に就任して間もないですが、すでに会社が変わったと感じることはありますか。

 現場の活気が出てきたと思います。社員の中にも「変わってきましたね」「10年、20年働いているけど、初めて楽しいと思いました」と言ってくれる人がいます。靴磨きを自分でやっていた長峰(前回参照)にしても、彼の強みとこれまでの会社の価値観が異なっていたので、ずっと評価されていませんでした。それが、靴磨きサービスが注目を浴びるようになって、いろいろな社員が彼にアドバイスを聞きに来るようになったんです。

 以前は、どちらかというと下に見られていました。「お前は、なんで余計なことをやっているんだ。早く売上を取れることをしろ」、と。この数ヵ月の変わりようはおもしろいですよ。現場が明るくなり、前向きになり、積極的な行動をとり始める人が増えてきました。それが一番の変化です。現場が元気でなければ、やはり組織はダメになると思います。

――最後に、これからの目標を教えてください。

 数字面はもちろんあります。それ以外では、まず当たり前のことを当たり前にできるようにすることです。現場の社員が常に感じている、まっとうな問題意識をすべて解決すること、それがベースだと思っています。その先は、もっとみんなが誇りを持てるように高みを狙っていきたいですね。その1つとして、旗艦店をつくりたいと思っています。

 また、方針説明会では、いまは修理できないことも修理できてしまう「世界最強の靴修理店舗をつくる」と伝えました。どこにも負けない、うちがトップだと言える店舗です。「われこそはと思う人は、ここを目指してください」と言ったら、「やりたいです」とかなりの数の声が上がりましたよ。当たり前のことができるようになったら、最大限、私たちのビジョンを達成するために、振り切ったことをやりたいと思います。

 振り切ったことをすることで、お客さまからの自分たちに対する認識も変わってくると思います。微妙に店舗がきれいになりました、ポスターがおしゃれになりました、という細々したことだけでは変わりません。イメージを変えるためには「ミスターミニットはこうなるんだ!」という象徴的でわかりやすい取り組みが必要です。

 もう1つ、うちには技術を突き詰めたいと思っている社員が多いんですよ、昔から。いままでは、そういう職人気質な人はほかの会社に流れてしまいました。ミスターミニットのほうが安定しているし、給料も高いけど、やりたいことができないので小さい会社でも移ってしまう。それをなくしたいですね。

 技術を突き詰めたい社員が、得意なことができるキャリアパスを用意したいと思います。ミスターミニットが、規模も最高だし、やりたいこともできる会社になる。どこよりも職人が活躍できる会社になる。本来、大企業でリソースはあるので、それはできるはずのことです。1人ひとりの社員が自分のやりたいことを突き詰められる環境をつくることが、いまの目標です。

――社員の声で会社を変えていく。しかし、迫さんが現場を回る時間も限られているので仕組みが必要だと思います。

 おっしゃる通りです。いまはまだ、私が現場を回ってハンズオンで課題抽出や改善を行っている状況で、仕組みの段階には至っていません。今後、プロの経営者としてやらなければいけないことは、課題解決サイクルを仕組み化することだと思います。

 社長がハンズオンで課題解決をしているだけではレバレッジが効きません。それをいかに仕組み化して、自律的に回るようにできるか。これから1、2年かけてやっていくべきことだと思います。それができたときには、本当にすばらしい会社になると思います。それも目標ですね。