弱みをさらけ出してこそ、良い成長ができる

――固定観念は誤っていることが多く、それを検証するための行動を取ることが成長への第一歩だ、と著書の中で指摘されています。しかし、そうした行動を取ること自体が、非常に勇気を必要とするものだと思います。自分自身のコンフォート・ゾーン(安心領域)から足を踏み出すために、何が必要でしょうか。

 まず大事なことは、自分の気づいていない不安についてしっかり見つめることです。気づいていない不安を理解できていないことが、足を引っ張っているのです。先ほどの例で言えば、協調的なリーダーになれるだろうか、というのは既知の不安です。そこには別の不安、すなわち協調的なリーダーになったら自分が重要にしていることが失われるのではないか、という不安。それが固定観念です。不安を感じたならば、なぜ不安に思うのかを真摯に問い直すことです。
 こうした固定観念を見つめ直すことは難しいことではありますが、そもそも免疫マップを使ったアプローチを採る人というのは、往々にして「やってみよう」というモチベーションが高い人たちです。アクセルを踏みつつ、もう一方の足でブレーキを踏んでいる状態の自分を認識し、そのブレーキが何かを探ろうとしている人たちですから、そこに向き合う意志の力は問題ないと思います。
 ただし、意志があっても行動に移すスキルがないために、ハードルが上がってしまうことがあるでしょう。ではどうすれば、そうしたスキルを得られるか。それにはコーチングを受けることが有効です。またMOOC(Massive Open Online Course:オンラインの大規模公開講座)で、私が行っているコースに登録するのも一つの手です。MOOCには全世界から、10万人ほどの人が参加をしています。そうした人々と不安を共有し、お互いに励まし合うことで前進する力は得られると思います。(編集部注:英語版のみ。JMOOC(日本版MOOC)は2014年4月より始動しているが、上記のようなコースは現時点ではない)
 改善目標は技術的な目標ではありません。体重を毎週1キロずつ落とす、といったような形で目標を立てることが大切なのではなく、自分の心、精神状態を適応型に変えていくことこそが大切なのです。コーチングやMOOCへの参加は、その手助けになると思います。

――自己変革の取り組みは、個人でやるよりも集団でやった方が効果は高く出るのでしょうか。

 状況によると思います。信頼関係があり、自分の弱みをさらけ出せるようなグループであればうまくいくでしょう。そういうコミュニティであれば、互いに励まし合って改善目標に近づこうと努力しやすいのではないでしょうか。MOOCのコースのような顔を合わせたこともないような集団であっても、あるいは見ず知らずの人だからこそ、自分の弱みを見せつつ他人を励まし、また自分も励まされるというコミュニティが形成されています。受講期間という短い期間なので、より凝縮された空間なのでしょう。
 より効果があるのは、顔を突き合わせて日々一緒に仕事をしている人たちのなかで、こうした関係を築けた時です。まさに、仕事場が良い成長の場となるのです。人々の能力の向上になり、その結果良い仕事に繋がっていくわけですから、そうした仕事場をつくることができればいいと思います。(了)