報酬ホルモンや爽快感を求めるのは、自然な衝動だ。とはいえ、いかなる仕事であれ成果を上げるためには、共感に基づく中立的な、完全に双方向のコミュニケーションが必須となる。したがって上記のような衝動を克服する方法を習得しなければならない。それこそが取引を成立させ、プロジェクトを軌道に乗せ、利益を上げることにつながる。そういうわけで現在の私は、当時のユニオン・カーバイドの幹部たちを支援したのと同じように、会話における知性を高める方法を教えている。
以下のような落とし穴を認識しよう。
やめるべきこと
●相手があなたと同じものを見て、同じように感じ、同じことを考えていると思い込むことをやめる。そんなことはめったにない。
●ある現実についてあなたと相手がどう解釈し発言するかは、感情(恐れや不信感など)によって変わる。この事実を忘れてはならない。
●自分は相手の発言を理解して記憶にとどめた、と常に思い込むのはやめる。実際には記憶に残っているのは、相手の発言に対するあなた自身の考えのみかもしれない。
●こうした会話上の盲点に関する自分の弱点を、過小評価しないこと!
始めるべきこと
●会話においてあなたが「支配する」時間に注意を払い、これを最小限に抑える。
●イエス/ノーではない発見のための質問をして、会話を共有する。あなたは答えを知らないので、興味が持続する(例:何の影響によって、その考えに至ったのですか?)。
●偏った判断をせず、回答に耳を傾ける。
●フォローアップの質問をする。
ユニオン・カーバイドの営業チームはコーチングを通じて、憶測、間違った解釈、早計な判断といった会話の落とし穴に気づき始めた。そして発見のための質問をするようになり、顧客の答えに細心の注意を払い始めた。その結果、価値判断の枠組みが広がり、顧客ニーズや事業機会について新たな気づきを得るようになった。こうした取り組みを経た幹部たちは、営業担当者ではなく「知的会話のパートナー」という自己イメージを体現し、くだんの契約を獲得した。
HBR.ORG原文:Why You're Talking Past Each Other, and How to Stop December 20, 2012
■こちらの記事もおすすめします
エグゼクティブ・プレゼンスは身につけられる
【書籍拝見】行動経済学入門 直観が意思決定を狂わせる ヒューリスティック、アンカリング
我々の脳は「正しい自己評価」ができない
インテュイットは「最高の問い」で創造性を育む

ジュディス・E・グレイザー(Judith E. Glaser)
ベンチマーク・コミュニケーションズのCEOおよびクリエイティング・ウィー・インスティテュートの会長。リーダーシップ、組織文化、ブランドの課題に神経科学の理論を適用し企業を支援している。著書にConversational Intelligence (BiblioMotion, 2013)などがある。