「チャンスを見つける能力」は生まれつきの才能だろうか?チャンスをいち早く特定するのが、利得や進歩を重視する「促進焦点」の考え方である。だが、万一これが弱くても、日々のちょっとした訓練で強化できるのだ。
起業家、そして何においても成功するにはチャンスに遭遇した時に、それをチャンスと認識できなければならない。具体的には、問題点や足りない部分を特定し、革新的な解決方法を見つける必要がある(もちろん、その解決方法を実行に移す能力も必要だが、そもそもチャンスと認識できなければ何も始まらない)。
それでは、チャンスを見つける能力を磨くにはどうすればよいだろうか。
「それはたぶん生まれつきの才能で、得意か不得意かのどちらかしかないだろう」と思う人もいるかもしれない。
残念でした。さあ、もう一度。
「それなら練習すればいい。つまり、経験を積むこと」。
たぶん違う(理由は後で説明するのでお待ちあれ)。
じらしてばかりでは申し訳ないので、先に答えを言ってしまおう。チャンスを認識する秘訣は、「促進焦点」なのだ。
私とトーリー・ヒギンズがHBR論文や新著Focusにも書いたように、あなたが自分の事業(あるいはキャリア、または目標全般)を進歩や達成、報酬を得るためのものだと見なしているなら、促進焦点を持っていることになる。つまり、成功したら何が得られるか、何がどう向上しているかに着目する場合だ。
一方、これまで懸命に努力して得たものを失わないこと、危険を避けて物事をスムーズに進めることを重視して事業に臨んでいるなら、あなたは「予防焦点」を持っていることになる。予防焦点のよい面はたくさんある。慎重な計画、正確さ、信頼性、綿密な仕事ぶりなどはその一部だ。しかし促進焦点の特徴である「創造性」「進取の気性」「チャンスをつかむ自信」にはつながらない。ドイツのミュンヘン工科大学スクール・オブ・マネジメントのアンドラニク・トゥマスヤンとライナー・ブラウンの新しい研究報告によれば、チャンスを見つけるにはこの3つが必要なのである(関連論文)。